どうも、太田アベル(@LandscapeSketch)です。
先日からQNAP NAS TVS-675の特集をしています。
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TVS-675を初めとするQNAPのNASには、M.2 SSDキャッシュを利用できる機種があります。HDDのアクセスをキャッシュし、より速くファイルを読み書きできるようにする機構です。
さて、M.2 SSDには通信規格がいくつかあります。大きくSATAタイプ、PCIeタイプ(NVMe)と呼ばれるものに分かれ、それぞれで通信速度が大きく異なります。
コストと通信速度のバランスがベストなSSDとはどう選べば良いのか、規格を見比べながら検討します。
M.2 SSDとは?
まずM.2 SSD(エムドットツー エスエスディー)について押さえておきましょう。
M.2 SSDとはこのような板状のSSDになります。
従来の2.5インチタイプと違い、ごく小さなスキマににも搭載できるため、薄型ノートなどでも採用が増えています。QNAPのTVS-675では下写真のような位置に搭載します。
通信規格と速度
まず最も重要な通信速度。
通信速度の限界値は、そのままSSDの限界速度となります。
コネクタは1種類※なのですが、規格がSATAタイプ、PCIeタイプ(NVMe)と大きく2つに分かれます。
まず従来の2.5インチSSDなどが使うのがSATAタイプ。こちらは最新のSATA III規格でも、理論最大速度600MB/sとなります。
現在最も速いSSDを使っても、実際の速度は読み込み550MB/s前後になります。これが限界となります。
次にPCIeタイプ。内部的にPCI-Expressにて接続されます。よくわからないかもしれませんが、SATAとはまったく違う通信経路で、非常に高速だと覚えていればOKです。
PCIeはGen 1~Gen 5などという「世代」があり、さらに「レーン」と呼ばれる通信回路を1~16個束ねて通信します。
「世代」ごとに1レーンの通信速度が上がり、さらに何本の「レーン」を使うかで、さらに通信速度が変わります。2レーンなら2倍、16レーンなら16倍の速度が出ます。
SSDキャッシュは速ければ速いほど、アクセスが高速化できます。ということは、対応していればPCIeタイプを使ったほうがよいというところまでわかりました。
TVS-675の最大通信速度とは?
さてPCIe接続タイプを使うことが決まりました。
つぎにどんな速さの製品を選べば良いか、です。
通信の限界速度を超えるような高速な製品を買っても、コストのムダになります。ただし、NASのように長期間にわたって使う機材の場合は、SSDの”寿命”にまで注目して選ぶ必要があります。
まずは搭載する機器の仕様を確認しましょう。
今回のTVS-675の仕様を確認すると、「PCIe Gen 3 x 1」という表記になっています。
これは「PCIe第3世代で1レーンの接続」という意味になります。
PCIe Gen3の1レーンの通信速度は「8Gbit/秒」です。これはビットなのでバイトに換算すると1Gbyte/秒(1ギガバイト毎秒)となります。
次にレーン数は「1」となります。つまり 1Gbytes/秒が1レーン = 1Gbyte/s x 1、限界速度は「1Gbyte/秒」だとわかります。
さらに分解すると、1Gbyte/秒は1000Mbyte/秒(1000メガバイト毎秒)です。
この数値を覚えておいてください。
それを踏まえてSSDの比較をします。
Amazonでいくつかの製品を見てみましょう。
Crucial(クルーシャル) P1シリーズ 500GB 3D NAND NVMe PCIe M.2 SSD CT500P1SSD8のスペック
読み込み最大1900MB/秒、書き込み最大950MB/秒という意味になります。読み込みは大幅に限界値を上回り、書き込みもほぼ限界値です。価格もお手ごろです。
キングストンテクノロジー Kingston SSD NV1-E 500GBのスペック
読み込み最大2100MB/秒、書き込み最大1700MB/秒です。
比較的安い機種なのですが、読み/書きともにPCIe Gen 3 x 1の速度を大幅に上回っています。通信速度を使い切ることができます。少しオーバースペックと言えるかもしれませんが、価格が安いので選びやすい機種です。
SAMSUNG SSD 980 MZ-V8V500B/IT DRAMバッファレス エントリーモデル M.2 SSD PCI-Express3.0×4接続 500GB のスペック
続いて高速で有名なサムスン電子のSSD。
なんと読み込み最大3100MB/秒、書き込み最大2600MB/秒に達しています!非常に高速ですが、NASに対しては完全にオーバースペックです。
価格は上記2機種よりは少し高くなります。能力の無駄遣い感はすごいですが、金額差に納得できるなら検討に入れてもいいでしょう。また、この下に書く「寿命(TBW)」に注目すると、有力な機種です。
QNAP互換製確認済みSSD
WESTERNDIGITAL ウエスタンデジタル 内蔵SSD 500GB WD Red SN700 M.2-2280 NVMe WDS500G1R0C-ECのスペック
上記3点の製品とは違い、NAS専用に開発されたSSDになります。
通信は非常に高速で、読み込み最大3430MB/秒、書き込み最大2600MB/秒に達します。キャッシュとして使うなら、完全にオーバースペックといえます。価格も上記製品の2倍以上となっていて、気安くは選べません。
ただ、この下に書く「寿命(TBW)」は1000TBWと、他の機種とは比べものにならないほどの耐久性を備えています。
またQNAP社のNASの多くで「互換確認」が取れているのも強みです。
電気的寿命にも注目
先ほど速度とともに注目した「TBW」という表記。
SSDはハードディスクと違い、書き込みをするとじょじょに記憶素子が劣化していき、最後は完全に書き込めなくなります。この限界値を「TBW(Total Bytes Written)」と呼びます。
故障の原因はさまざまなので、TBWに達しても壊れてないもの、TBWにまったく達していないのに壊れるものはあります。あくまで一つの目安ですが、少ないものより多いものの方が長く使えそうだ、とざっくりした耐久度の判断には使えます。
さきほどの例で言うと、サムスン電子製は300TBW、クルーシャルのものは120TBWとなっていました。同じような使い方をした場合、サムスン電子の方が長く使えそうです。
例えばサムスン電子製は保証期間が「保証期間5年もしくは300TBWに達するまで」となっています。
1日50GBのデータを書き込んだとすると、50GB x 365日 x 5年 = 91250GB(およそ91TBW)となり、300TBにはまったく達しません。5年の保証期間内に消耗する可能性は少なそうです。
逆にクルーシャル製は120TBWとなっていて、91TBとなるとそろそろ危なくなるかな、という感触です。それでも5年の保証期間内は正常に動作しそうです。
サムスン電子製はだいぶオーバースペックでしたが、TBWが多いから選択する、というのはアリです。
QNAPではそれぞれのNASに対して、互換性の確認が取れた部品リストを公開しています。確認されたものなら相性問題などもクリアできており、より安心して購入できます。参考にしてください。
WTS的まとめ
NASでSSDを選択する際は速度とTBWに注目することで、明確な理由を持って選択できます。理由がしっかりしていれば、稟議書も通しやすいのではないでしょうか。(笑)
また企業用途の場合、なるべくメーカーが公開している互換品リストを参考するべきでしょう。故障時の問題の切り分けがしやすくなります。
コストとのバランスを考えて最適なものを選び出してください!
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