どうも、太田アベル(@LandscapeSketch)です。
シングルドライブの初心者向けNASから、24ベイのオールフラッシュエンタープライズNASまで、幅広いデータストレージを展開する「Synology(シノロジー)」。
まるでスマートフォンのような使いやすい管理画面「DSM」と、単なるファイルサーバーだけにとどまらない、数々のサーバー機能が魅力です。筆者も8年近く前から同社のNASを活用してきました。
さて、今回レビューするのはエンタープライズ向けの高機能 6ベイNAS「Synology DS1621xs+」 です!
CPUにはIntel Xeon D-1527(4コア/8スレッド)、8 GB DDR4 ECC付きメモリ、10GbE + 1GbE LAN、6ベイのストレージスロットを持ち、さらにM.2 SSD キャッシュやPCI-Expressカードによる拡張も可能など、数十人単位のアクセスにも耐えられるほど強力な装備を有します。
NASというより、もはやPCサーバーのようなスペックですが、管理画面は扱いやすく、初めてでもカンタン・安全に設定できます。
さっそくレビューしていきましょう!
- 数十人のアクセスにも耐えられる超高性能
- 静かな動作音
- 10GbE高速LANポートを搭載
- M.2 SSDキャッシュ、32GBまで拡張できるメインメモリでさらに高速に
- 仮想PCサーバ(VM/Docker)としても使える
- PCIeスロットで拡張が可能
レビュー品のスペック
システム | 機能 | スペック |
---|---|---|
CPU | CPUモデル | Intel Xeon D-1527 |
CPU 数量 | 1 | |
CPUアーキテクチャ | 64-bit | |
CPU 周波数 | 4-core 2.2 (ベース) / 2.7 (ターボ) GHz | |
ハードウェア暗号化エンジ (AES-NI) | ||
メモリ | システム メモリ | 8 GB DDR4 ECC SODIMM |
プリインストールされたメモリ モジュール | 8 GB (8 GB x 1) | |
メモリスロット数 | 2 | |
最大メモリー容量 | 32 GB (16 GB x 2) | |
メモ | 最良の互換性と信頼性のために、Synology メモリモジュールお選びください。Synology 製以外のメモリを使ってメモリを拡張された場合は、Synology は製品保証およびテクニカル サポートを提供いたしません | |
推奨されるメモリ構成の詳細については、こちらをご参照ください。 | ||
Synology はサプライヤーの製品ライフサイクルに応じてより高い周波数のメモリモジュールに交換する権利を有しています。性能の違いが生まれないよう、同じベンチマークによってその互換性と安定性が厳しく検査されますのでご安心ください。 | ||
ストレージ | ドライブ ベイ | 6 |
拡張ユニット使用時の最大ベイ数 | 16 (DX517 x 2) | |
M.2 ドライブ スロット | 2 (NVMe) | |
互換性のあるドライブ タイプ* (サポートされるすべてのドライブはこちら) | 3.5" SATA HDD | |
2.5" SATA HDD | ||
2.5" SATA SSD | ||
M.2 2280 NVMe SSD | ||
最大シングル ボリュームのサイズ* | 200 TB (32 GBのメモリが必要) | |
108 TB | ||
ホットスワップ可能なドライブ | ||
メモ | 「互換性のあるドライブ タイプ」は、Synology 製品と互換性があることを試験済のドライブです。この用語は、各ドライブベイの最大接続速度を示すものではありません。 | |
各内部ボリューム (複数のドライブ構成あり) は、最大 108TB (メモリが 32GB 未満) または 200TB (メモリが 32GB 以上) まで拡張可能です。 | ||
外部ポート | RJ-45 1GbE LAN ポート | 2(Link Aggregation / フェイルオーバー対応) |
RJ-45 10GbE LAN ポート | 1 | |
USB 3.2 Gen 1 ポート* | 3 | |
eSATA ポート | 2 | |
メモ | USB 3.0 スタンダードは、2019年の USB インプリメンターズ・フォーラム (USB-IF) によって USB 3.2 Gen 1 に名前が変更されました。 | |
PCIe | PCIe 拡張 | 1 x Gen3 x8 slot (x8 link) |
ファイル システム | 内部ドライブ | Btrfs |
EXT4 | ||
外部ドライブ | Btrfs | |
EXT4 | ||
EXT3 | ||
FAT | ||
NTFS | ||
HFS+ | ||
exFAT | ||
メモ | exFAT Accessは DSM 7.0ではパッケージセンターから無料でインストールすることができます。DSM 6.2以前のバージョンの場合、パッケージセンターでexFAT Accessを購入する必要があります。 | |
外観 | 外寸(高さx幅x深さ) | 166 mm x 282 mm x 243 mm |
重量 | 5.3 kg | |
その他 | システムファン | 92 mm x 92 mm x 2 pcs |
ファン速度モード | 最高速度モード | |
冷却モード | ||
低ノイズモード | ||
簡単に交換できるシステム ファン | ||
輝度調整のためのフロント LED インジケータ | ||
電源復旧 | ||
ノイズレベル* | 25.2 dB(A) | |
電源をオン/オフに予約する | ||
Wake on LAN / WAN | ||
電源ユニット / アダプタ | 250 W | |
AC 入力電源電圧 | 100 V から 240 V AC へ | |
電源周波数 | 50/60 Hz, 単相 | |
消費電力* | 62.85 W (アクセス) | |
34.26 W (HDD ハイバネーション) | ||
英熱量 | 214.45 BTU/hr (アクセス) | |
116.89 BTU/hr (HDD ハイバネーション) | ||
メモ | 電力消費量は、Western Digital 1TB WD10EFRX ハードドライブにデータをフル ロードした状態で測定されています。 | |
ノイズレベルのテスト環境:Seagate 2TB ST2000VN000 ハードドライブをアイドル状態でフル装備。G.R.A.S. 2 個タイプ 40AE マイク、それぞれ Synology NAS の前後から 1 メートル離して設置。背景ノイズ:16.49-17.51 dB(A)、温度:24.25-25.75˚C; 湿度:58.2-61.8% | ||
温度 | 動作温度 | 0°C から 40°C (32°F から 104°F) |
保管温度 | -20°C から 60°C (-5°F から 140°F) | |
相対湿度 | 5% から 95% RH | |
認証機関 | FCC | |
CE | ||
BSMI | ||
EAC | ||
CCC | ||
KC | ||
VCCI | ||
RCM | ||
保証 | 5 年 |
今回レビューするのは上位モデルの「DS1621xs+」となります。DS1621+はコンシューマーから小規模ビジネス向け6ベイモデルとなり、DS1621xs+よりは全体的にスペックが低くなります。ですが、より入手しやすい価格帯となります。購入時はお間違いのないよう、十分にご確認ください。
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落ち着いたウラカタのデザイン
本体はシンプルで控えめなSynologyデザイン。
前面パネルはさらっとしたプラスチック、ボディー部分は梨地加工にブラック塗装がされた金属パネルです。シンプルでカタいイメージを感じさせるデザインです。目立たないよう、ウラカタの機材に徹していて、好感がもてます。
前面のLEDやスイッチ類も必要最小限で、超高機能なのですがむずかしさを感じさせません。
ボタンにいたっては、電源ボタンたった1つしかありません。「このボタンはなんだろう?」とやたらボタンを押したがる人からも、防御できるのではないでしょうか。(笑)
側面のSynologyの部分はメッシュになっており、放熱口となっています。
下位モデルでも同じようなデザインですが、DS1621xs+のほうが目が細かいメッシュになっています。
背面には大型のファンが2基、拡張スロット、ポート類があります。
ポート類
ポート類を詳しく確認します。
もっとも重要な有線LANポートは3基あり、1基(写真一番左)は超高速な10GbE(10Gbps)を搭載!残り2基は、一般的な採用が多い1Gbpsとなります。
10GbEは対応機器をそろえれば、従来の1Gbpsに比べ、最大10倍の理論転送速度を発揮します。
巨大な動画や写真がネットを飛びかう昨今、従来の1GbpsのLANでは完全に役不足です。企業なら最低でも2.5GbE、できれば10GbEを備えたいところ。
DS1621xs+は標準状態で10GbEを実現しており、先進的な機種と言えるでしょう。
前面に1個、背面に2個のUSBポートがあります。
すべてUSB 3.2 Gen 1 (5Gbps)となります。ここにはUSB HDDを接続してバックアップを取ることや、USBフラッシュドライブを接続し、データのやりとりが可能。
またeSATAポートを2基備えます。ここにはDX517のようなドライブ拡張ユニットを接続できます。
[amazon asin="B06Y4J9GR8" kw="Synology dx517" title="【NAS用拡張ユニット】Synology DX517 5ベイ / SATA対応/Synology DiskStation専用" btn1_url="//ck.jp.ap.valuecommerce.com/servlet/referral?sid=2818777&pid=882689776&vc_url=https%3A%2F%2Fwww.dospara.co.jp%2F5shopping%2Fsearch.php%3Fft%3DSynology%26gosearch%3D%25E6%25A4%259C%25E7%25B4%25A2%26waad%3DhX0TUucV" btn1_text="ドスパラ(国内正規取扱店)"]DX517は最大5台のドライブを搭載できます。DX517を2台つなげれば最大10ベイを追加でき、合計16台の巨大NASを実現できます。
メモリソケット
メインメモリは底面の蓋を開けるとアクセスできます。スロットは2基。1基には標準搭載のメモリが入っていました。
組み立て
組み立てをしてみましょう。
今回はメインストレージ用として、ウェスタンデジタル WD RED (CMR) 3TBを6台用意しました。
この2つはHDDの記録方式に大きな違いがあり、スタンダードはSMR、PlusはCMRとなっています。
SMRのほうが新しい高密度記録方式なのですが、従来と違って「ブロック読み/書き」という方式を採用するため、細かなファイルが多いとCMRより遅くなることがあります。
特に多数のファイルを常時連携させるNASでは、目に見える速度低下が起こる場合や、ゴーストファイル(本当はないのだが、同期が間に合わずあるように見える)現象が起こります。(実体験)
当方は長年使った経験から、CMR方式のPlusもしくはProを推奨いたします。
まずHDDトレイを引き出します。
トレイは下の部分を押すとカチッとハンドルが上がってきます。
HDDトレイはすべてプラスチック製でした。
トレイはまず左右のプレートを外します。その後ディスクを置き、プレートをパチッとはめ込めばOK。
3.5インチドライブならドライバーも不要で、非常にカンタンです。2.5インチはネジ留めが必要ですが、目印が打ってあり、機械が苦手という人であってもまったくむずかしくはありません。
トレイを取り付けたら、本体に戻せばOK。
SSDキャッシュの搭載
DS1621xs+はストレージベイに加え、2本のM.2 SSDを搭載可能。(NVMe / SATA 両対応)
M.2 SSDスロットは本体内側の左側面にあります。本体を停止しドライブを3本以上抜かなければ手が入らないため、できれば購入時に取り付けておきたい。
M.2 SSDを搭載すると、読み込みもしくは読み書きキャッシュとして利用可能です。
ハードディスクは細かなファイルアクセスが苦手です。SSDキャッシュはアクセスの多いファイルをため込み、すばやく返す仕組みです。また、書き込み時もSSDで受け取り、ハードディスクの空き時間に書き込んでいくため、書き込み待ちの時間が短くなります。
読み込み、書き込みの体感速度がグッとアップします!予算に余裕があればぜひ搭載をおすすめしたい機能。
M.2 SSDの取り付けは非常にカンタンです。取り付けや設定方法などは次回のレビューにて。
起動してみる!
組み立てが終わったらさっそくスイッチを入れます!
初期状態では「フォォォン」と比較的大きなファンの音がし続けます。
「さすがにXeonを積んだハイエンドNASは、ファンも迫力があるな」と思っていましたが、DSM(OS)をインストールし終わると、急にファンの回転が落ち、驚くほど静かに!
DSM設定前はファンの制御がされていないので、最高速で回っているのでしょう。
メインで使用中の4ベイNAS DS918+と比べても、さほど違わないほどの静粛性です。
これほど高性能なCPUと6台ものディスクを搭載しているのに、家庭でも動かせるほど静か!これはうれしい驚きです。※騒音は筆者の感覚によります。
3分ほどたちますと「ピー」というブザー音が聞こえます。これでDS1621xs+にアクセス可能になります。
初めてのアクセスはURLを打ち込むだけ
さてどうやってNASにアクセスするのでしょうか?
通常であれば専用接続ツールを使ったり、IPアドレスを特定して直打ちしたりと一手間かかるものですが、SynologyのNASはブラウザに「find.synology.com」というアドレスを打ち込むだけ!
なんとブラウザにNAS検索画面が現れ、あっさりローカルのDS1621xs+が見つかってしまいました!
これはカンタンすぎる!
すぐにセットアップを始めることができます。
セットアップもわかりやすい
ウィザードに沿って進め、管理者アカウントを作成します。
その後、ディスク、ネットワーク、ログインのセットアップができます。こちらもユーザーフレンドリーなわかりやすい画面です。
複数のディスクを使用するマシンでは、ディスク用語が少し分かりづらいかもしれません。軽く解説します。
ディスク用語 | 意味 |
---|---|
ディスク | 物理的なハードディスクそのものを指します。 |
ストレージプール | 複数のディスクを束ね、ボリュームを作るための場所を作ります。整地した土地のようなイメージ。 |
ボリューム(ストレージ領域) | ストレージプールの中に、実際にファイルを書き込むための領域を割り当てます。 |
6台のディスクから1つ以上のプールを作り、プールの中に家の区画を割り当て、そして家(ファイル)を建てる。このようなイメージです。
実際はもっと複雑な説明が必要ですが、とりあえずこの3段階で構成されているよ、ということが分かればOKです。
RAIDは0、1、5、6、10、JBODが選択できます。
管理画面はシンプルで使いやすい
セットアップが終わればすぐにDS1621xs+を活用できます。
ただし、セットアップ直後はバックグラウンドで「バックグラウンドの最適化」が進んでおり、全体的なパフォーマンスは重くなります。
最適化処理は3TB x 6台のディスクの場合、完了までおよそ15時間ほど必要です。この時間は短縮はできませんので、1日程度放っておくのがよいでしょう。
管理画面(DSM)は、アイコンをクリックするとウィンドウが開き、ほとんどがマウスのみでカンタンに設定できます。WindowsやMacを操作してるような感覚で、とてもわかりやすい。
ちなみにアイコンは最近の大型バージョンアップでより洗練され、iOSのアイコンのようなクオリティになっています。
「パッケージセンター」からはワンクリックでさまざまな拡張機能をインストールでき、ファイルサーバーにとどまらない多様な機能に拡張できます。
拡張機能は非常に数が多いので、またじょじょに記事にしていきたいと思います。
高速ネットワークを存分に使える高速応答
さて、さっそく応答速度をベンチマークしていきましょう!
[ベンチマーク手順]
- iSCSI LUN(10GB)を作る
- ネットワークをジャンボフレーム9KBに設定
- Windows 10にてマウント
- NTFSにてフォーマット
- Crystal Disk Markにてテスト
1GiB転送試験
4GiB転送試験
数字を見れば一目瞭然ですが、シーケンシャルアクセスは読み/書きとも300MB/s前後の、とんでもない速度です!1GB級の動画ファイルでも、1000枚の写真でも、ストレスなくサクサクとコピーしていきます。
Windows上の単なるコピー操作でも、まるでローカルのUSB HDDに書き込むかのごとくシュッと書き込まれ、待ち時間が非常に少ないですね。
しかしこれはまだまだ序の口。
この300MB/sという数値は2.5GbEの理論限界値に近い速度。つまりDS1621xs+の転送速度は、2.5GbEの帯域をすでに使い切ってしまっているのです。
10GbEともなればさらに強力な性能を示してくれるはずです!
WTS的まとめ
ディスク数、CPU、メモリ、ネットワーク、NASに求められる性能を十二分に備えています。
DSMは操作感覚自体は下位モデルと変わりませんが、あらゆる項目がキビキビサクサクと動き、業務中に大急ぎで設定を変えていきたい場合でも、ストレスなく操作できます。
大容量ファイルを社内でやりとりするなら、2.5Gbpsや10GbEを搭載したNASが、必須の自体となっています。
企業で中核となるNASを設置したい、と考えているのなら、DS1621xs+は第1候補として選んでいきたい機種と言えます。
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