パブリッククラウドは本当に安全か?Synology Driveで自分だけの大容量クラウドストレージを作る

どうも、太田アベル(@LandscapeSketch)です。

いまやほとんどの人が利用している「クラウドストレージサービス」。

  • Apple iCloud
  • Google Drive(Google Photo)
  • Amazon Drive(Amazon Photo)
  • Microsoft OneDrive
  • DropBox

などが有名です。このような商用として提供されているクラウドストレージを「パブリッククラウドストレージ」と呼んだりもします。

2022年現在の料金としては、100GBで500円、1TBで1000円、2TBで2000円ぐらいが相場。1TBを1年使うと12,000円!2TBなら24,000円!なかなかの金額です。

さらに企業で使うとなると、人数分のコストが掛け算となります。10人いれば10倍、100人いれば100倍です。相当な料金となるでしょう。

残り容量と料金の板挟みで、毎月いらないデータの整理に時間を取られている人も多いのではないでしょうか。

 

そこで今日は、SynologyのNASが搭載しているSynology Driveを使い、自分だけのクラウドストレージを作ってみようと思います。

Synology DriveはSynologyのNASを購入すれば、無料で使用できます。

つまり、4TBのNASをもっていれば、4TBのクラウドストレージが実現でき、さらに利用可能人数は無制限。使う回線は普段使っているインターネット回線なので、特殊なルーターや高額な回線契約も必要ありません。

それでいて、使い勝手は大手のクラウドストレージとほぼ同じ!

さっそくセットアップをしてみましょう!

NASのセットアップ

まずはSynology NAS側の設定です。

管理画面(DSM)に入り、「パッケージセンター」から「Synology Drive Server」をインストールします。

Synology Drive

 

次に自分のNASを安全に公開するために、Synology QuickConnectに登録します。

これはNASを通常のインターネットから安全に見られるよう、独自のIDを登録するものです。このIDさえあれば、自宅のNASに世界のどこからでもアクセスすることができます!

もちろんユーザーID、パスワードがなければ、他人が入ることはできません。(ハッキング被害を受けないよう、パスワードは複雑にしておきましょう!)QuickConnectの設定は、コントロールパネルの「外部アクセス」から行います。

有効にするにチェックを入れ、任意のIDを設定します。IDは英数字のみです。

Synology QuickConnect

 

また、「詳細設定」で「QuickConnect中継サービスを有効にする」にチェックが入っているかを確認し、その下の「Synology Drive Server」にもチェックが入っているかを確認します。

Synology QuickConnect 詳細設定

 

これだけでもう準備OK!

Synology Driveのアイコンをクリックすると、すぐに自分だけのストレージ画面に入ることができます。ユーザー名やパスワードはNASのユーザーと同期しています。

クライアントの設定

続いてWindowsでクライアントの設定をしてみましょう。

さきほどのSynology Driveの管理画面に入ります。

Synology Drive 個人データ画面

 

左下のユーザー名をクリックし、「クライアント」>「ダウンロード クライアント」を選択します。PC用、モバイル用の選択画面になります。

Synology Drive クライアント

 

PCはWindows / Mac / Linux(Ubuntu) に対応しています。モバイル用はiOS用、Android用があり、それぞれのストアアイテムにつながります。

今回はWindows 10にてテストします。

セットアップするとこのような画面になります。先ほど登録したQuickConnectのIDを入れ、NASのユーザーIDとパスワードを入れます。

 

 

正常に接続されるとファイルをどのように同期するか、同期するフォルダをどうするかなどを聞かれます。

同期するNAS側のフォルダは、個人ごとは「/home/Drive」以下となり、「チームフォルダ」を有効にすれば、共有フォルダを割り当てることが可能です。

PC側の個人用データは「C:\Users\ユーザー名\SynologyDrive」に連携されます。(変更可能)

Synology Drive 同期設定

 

これでエクスプローラーと同期され、NASにあるものがフォルダに表示され、ファイルを変更したり削除すればNASの方も同じ状態になります。非常に便利!

いちいちNASからダウンロードしたり、アップロードしたりを繰り返す必要はありません。

OneDriveやGoogle Driveと同じように、わかりやすい同期アイコンが表示され、ローカルに常に実体を持つように設定できます。

Synology Driveエクスプローラーの操作

 

ちなみに標準設定では、ファイルを同期するごとにWindowsの通知が出てしまいます。

気になる場合は、タスクトレイのSynology Driveのアイコンをクリック、右下の「・・・」をクリック、設定をクリック。

出てきた画面の「グローバル設定」「通知」「ファイルイベントのデスクトップ通知を表示」をOFFにします。

Synology Drive 通知設定

実際のデータはどこに入る?

どころでSynology Driveで同期したデータはどこに入るのでしょうか?

これは /home/Drive の中に入っています。(正確には/home/Driveはシンボリックリンク。実体は /homes/ユーザー名/Driveです。)

/homeはそれぞれのユーザーごとに完全に分かれていて、複数人でSynology Driveを使っても、ファイルが混ざることはありません。

無制限の容量

Synology Driveは完全にNASと一体化しているので、NASの容量がそのままクラウドストレージの容量となります。

HDDは年々低価格化し、NAS用の3TB HDDでも15,000円で購入できる時代です。(2022年現在)

3TBは商用のストレージでは選択できないこともほとんど。2TBであっても年間25,000円程度の支払いが必要です。この料金は数年に一度ぐらいしか下がりません。

NASの容量をアップすればそのときはコストがかかるものの、その後は完全に無料!容量アップにビクビクすることはなく、ノンストレスです。(電気代やネット代金はかかりますが、気になるほどではないですね)

本社→支店の情報共有にも

本社のメインアカウントを作り、そこに支店からSynology Driveで接続すれば、本社がファイルを入れたと同時に支店にも同じファイルが現れます。

同報メールやら、ファイル転送やらの手間を一気に省けます!

読み、書きの権限もNAS内と同様に与えられるので、意図しない編集や、新人がいきなり削除したり(笑)といった事故を防ぐこともできます。

 

また冒頭にも書きましたが、接続人数は何人でも支払は発生しません。NASの容量がある限りデータを保存できます。

※Synology Driveで同期できるファイル数はモデルごとに上限があります(各モデルの仕様にてご確認ください)。また、同時接続できるユーザー数もそれぞれのNASで限界があり、多くなればパフォーマンスが低下します。

 

社員の中にはクラウドストレージをほとんど使用しない人もいます。しかしパブリッククラウドは、たとえ使用量がゼロであっても割引はされません。

Synology Driveなら、人数ではなく実質的な使用量でコストを計算できます。

クラウドストレージを社員50人で使う場合を考えてみましょう。

クラウド パブリッククラウド Synology NAS
ハードウェア 0円 70,000円(DS920+本体)
90,000円(WD RED 8TB x4 = 32TB)
RAID 5の場合実質24TB
ソフトウェア 0円 0円
すべて標準機能
月額料金 1年間 600,000円
(1,000円 x 50人 x 12ヶ月)
※大口割引は考慮せず
0円
容量 100GB / ユーザー
(使用ゼロでも料金は同じ)
480GB / ユーザー
(使用ゼロの人がいれば、他の人がより多く使うことができる)
保証期間 5年
総計 毎年 600,000円 1回 160,000円のみ
(毎月 電気代 + インターネット接続料はかかります)

 

パブリッククラウドから移行すると、非常に大きなコスト削減になるかもしれません。

絶対に誰にも見られない

もう一つ押さえておきたいのは、大手のクラウドストレージはファイルを監視している可能性があるということ。公言はされていませんが、たとえば写真はAIの学習で非常に有用なデータ。人間ではなくAIが見ているといっても、気持ちの良いものではありません。

各大手が格安や無料でストレージを提供するのは、”ユーザーの写真を利用する”という「もう一つの利益」があると考えておいた方がいいでしょう。

 

家族写真ならまだしも、会社の重要機密をやりとりした会議のホワイトボードや動画をクラウドストレージに保存していませんか?

さらに最近ではマイナンバーカードの申請や銀行の口座開設などに、身分証明書をスマートフォンで撮影することもよくあります。それらも自動で保存されていませんか?

 

それらは本当に安全でしょうか?

万が一クラウドサービス会社に悪意のある人間がいたら、そのデータは100%見られないのでしょうか?

その答えは事件が起こってからでしか、わかりません。

 

しかしSynology Driveならすべては自分のNASの中。通信も暗号化され、自分以外に見られることはありません。

企業秘密などが含まれるファイルは、大手のクラウドストレージだからと安心せず、自分で全て管理する方が確実で安全と言えるでしょう。

WTS的まとめ

自分だけのクラウドストレージがわずかな操作で実現できるSynology Driveは、リモートワークが進む現在、非常に重要な手段です。

特に重要機密や漏れてはならない個人情報データは、100%自分で管理するのがベストです。

Synology Driveはコスト削減、安全性、両方を実現してくれる最良の手段の一つとなるでしょう。

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