本当に「お久しぶりです!」と語りかけたくなる商品です。
今日は1スロット&ロープロファイル仕様のグラフィックカードの新製品「SPARKLE Intel Arc A310 ECO」を買ってまいりました!
1スロット・ロープロファイルカードのジャンルは、新品で購入できる製品は存在するものの、数世代前のローエンドがいまだに現役。
GeForce系は、かなり古いGT 1030やめちゃくちゃ古いGT 730などがメイン。かなり投げやりなラインナップです。しかもいまだにGT 710の新製品が発売されます。
Radeon系はかろうじて一世代前のRX6400を出している状態。それ以外はRX 550など数世代前です。
超弩級の性能を競い合うNVIDIAとAMDには、需要も利益も少ない末端チップを新開発しているヒマなんてないのでしょう。
そんなジャンルに今回参加してくるのがインテル Arcシリーズです。
地球上の何割かを占めるほどのCPUを製造していながら、単独GPUに関しては最後発となってしまった不思議な立ち位置のインテル(途中に何度か手を出したことはありましたけど)。
新GPUブランドとなる「Intel Arc」はネームバリューはほぼなく、絶対性能もドライバの熟成も、先行するNVIDIAとAMDにはまだまだ距離があると言わざるをえないところ。
絶対性能で追いつくのは一朝一夕には無理。ならば、まずはとにかくArcのブランドを広めたいというのが本音でしょう。
どんな理由であれ、1スロット・ロープロジャンルへ最新チップがやってくることを素直に喜びたい。
もちろんこのジャンルは小規模な上に低価格も望まれるところ。筆者購入時は15,880円(2024-3-20時点 Amazon)で、他の数世代前のカードと大きな差がない点もうれしい。
「少し古いスリムパソコンを安価にパワーアップしたい」といったシチュエーションにしっかり応えてくれます。
さて毎度余分な話が長くなりましたが、さっそく実機レビューに入りましょう!
- めずらしい1スロット、ロープロファイルの新製品
- IntelのGPUシリーズ「ARC A310」を搭載
- 静音性は良く、スリムPCでもそれほど目立つ騒音は感じない
- ゲームはライトゲームまで
- AV1などの最新エンコーダに対応し、動画変換用としても期待できる
- ブラケットの付け替えにかなり問題あり
- ファンがうるさめ
SPARKLEというメーカー
Intel ArcはNVIDIA、AMDと同じように本体チップのみを提供し、ボードは各メーカーが独自にアセンブリする形。今回の製品は「SPARKLE(SPARKLE Computer)」からの発売となります。
「SPARKLE」という名は、恥ずかしながら筆者は初耳でした。
台湾の電子部品会社で、公式ページには「Since 1982」とあり、40年余の歴史があるようです。ヒストリを見ると「グラフィックカードは1994年に参入」とあります。若い会社ではないので、製品品質は安心できそうです。(が、このあといきなり裏切られる)
ボードの確認
濃いブルーのカバーでおおわれた、薄型のカード。カバーはプラスチック製で、内側にヒートシンクと、冷却ファンを1つ装備。
サイズは公称 156 x 69 x 15 (mm)とされ、最新グラフィックカードでは最小に近いサイズです。最近はローエンドでも2スロット厚が増えており、1スロットに収まるのは貴重な存在。
搭載できるカードが極めて限られるNEC Lavie DTにも入れられるかもしれません。これは別の機会に検証していきたいと思います。(以前のレビューではギリギリNVIDIA T600、T1000まで入ることを確認。)
補助電源は必要ありません。
出力ポート
出力ポートはMini DisplayPort x2、HDMIポート x1となっています。」
Mini DisplayPortは最大7680 x 4320@60Hzの8K映像。HDMIは2.0bで4096 x 2160@60Hzの4K映像を出力可能。
スペック
チップはIntel ArcシリーズのローエンドとなるIntel Arc A310。
インテル Xe HPGアーキテクチャを採用し、TSMC N6で製造されます。メインエンジンとなるXe-Coreは6基。メモリはGDDR6の4GBを搭載。消費電力は公称値50Wとなっています。
DirectX 12 Ultimate、Vulkan 1.3、OpenGL 4.6など、主要テクノロジーの最新バージョンに対応しているほか、レイトレーシングやOpenVINOといったこれからのテクノロジーにも対応しているのが見どころ。
それよりも、H.265(HEVC)、AV1といった現在主流のビデオエンコードサポートがあるのが強み。
IntelのCPU内蔵グラフィックでのエンコード「Intel Quick Sync Video(インテル クイックシンクビデオ=QSV)」は、品質に定評があります。ほぼ同じ仕様のA310も、ビデオエンコーダ用カードとして期待できます。
ロープロファイル変換・・・が保証切れになる!?
標準ではフルハイトブラケットが付いてきますが、ロープロファイル変換ブラケットも付属し、自分で交換することができます。
しかしここでとんでもない設計が発覚!
普通はネジ2本ぐらいでカンタンに交換できるブラケットですが、SA310C-4Gはなんとヒートシンクの下にネジが入ってしまっており、ヒートシンクごと外さなければ交換が不可能なのです!
さらに、肝心のヒートシンクのネジには、なんと「これをはがすと保証が無効になる」シールが!いろいろな角度から見たものの、ヒートシンクがずらせるわけでもなく、シールをはがさず交換することは不可能。
どうすりゃいいんだ!
これを設計したやつはブラケットを交換してみなかったのか?
「テスト品はカバーが付いていないから交換するのはカンタンだった」・・・とか言わないよね?
そこで代理店のアユートのページを見ると・・・たぶん同様のクレームがたくさん入ったのでしょう。ブラケット交換についての専用ページとマニュアルが公開されていました。
そして問題のシールについては、「この機種に限っては、はがしても保証は大丈夫」とのメッセージが・・・。やっぱりはがさないと無理なんだ。
なんだかな。
ということではがしました。
では、ロープロファイルブラケットへの取り替え方法です。
ヒートシンクをはがしたところ。グリスがすこし途切れてしまっていますし、メモリ側の熱伝導シートもはがれています。きれいに貼り合わせないと高熱になるかも。
交換自体はさほどむずかしくはないですが、ヒートシンクを外して再度付けた場合、熱伝導グリスの性能が低下しないか不安になります。グリスがやわらかい新しいうちに交換するか、もしくは交換時に塗り直した方が安心でしょう。
次にブラケットの交換です。
逆の手順で締めれば完了。ロープロファイル化できました。
ちなみに兄貴分のArc A380を搭載したSA380G-6Gも、やっぱりヒートシンクを外さなければならないようです。なかなかとんでもない。
もし「納入するまで気づかなかった!」というならテストと品質検査に問題があるし、「知ってたけどだまっておこう」というなら企業の態度に問題があります。どちらにしろ、代理店からは要注意メーカーに指定されるのは間違いなさそう。
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