コア数が増え、どんどん性能が上がっていくCPU。速くなるのはうれしいものの、消費電力も上がり続けるのが悩みどころ。
最近のハイエンドグレードになると、ピークはCPUだけで200Wを超え、大型水冷でなければ冷やしきれないほどの熱量になっています。
逆にモバイルCPUの世界では、限られたバッテリーと熱処理の中でいかに能力を出し切るか?に知恵が絞られています。つまり省電力、低発熱を守りつつパフォーマンスも上げているのです。
じゃあモバイル用CPUをデスクトップで使ったらすごいんじゃないの?
という発想で作られているのが、今回買ってきた「MINISFORUM BD770i」です。
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DB770i箱。それほど派手ではない。
モバイル用のハイパフォーマンスCPU「AMD Ryzen 7 7745HX」を搭載した、めずらしいmini-ITXマザーボード。最近超小型PCを連発しているMINIS FORUMの製品。
デスクトップケースはノートより格段に広く廃熱に余裕があり、さらに電力は無制限!バッテリーと熱の呪縛から解き放たれたRyzen 7 7745HXは、とんでもない実力だった!
マザーボードのチェック
MINISFORUM BD770iのセット内容を確認していきます。セットは一般的なマザーボードと同じようなもの。マザーボード本体、各種取り付けプレート、ネジ類、簡易マニュアル、Wi-Fiのロッドアンテナです。
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MINISFORUM BD770iのセット内容
規格はmini-ITXの170 x 170mm。CPUはすでに取り付けられ、ボードの1/2を占めるほどの巨大なヒートシンクに覆われています。ちなみにCPUはハンダ付けなので交換は不可能です。ベアボーンに近い感じ。
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MINISFORUM BD770i
CPUファンは付属しません。別途用意が必要ですが、一般的なケースファンと同じ12cmファン(12025)をそのまま取り付けられます。
Noctuaなどの高性能ファンを付けたり、光モノで攻めたり※と、12cmファンは選択肢が豊富なのでこだわりを入れられます。
とはいえ、PCケースならある程度の風量でも「まあいいか」で済みますが、今回はCPUを冷やすので性能には気をつけたい。特に細かいフィンにしっかりと風を通すため、静圧性能(風の直進する強さ)を意識して選びたいところ。
今回は「XPG VENTO PRO 120 PWM」を使用。12cmファンの中ではトップクラスの静圧性能があり、音も静かめ。Nidec(日本電産)のGentle Typhoon技術で、性能も耐久性も折り紙つきです。Noctua NF-A12x25の半額ほどで、お手軽なのも魅力。
メモリは、ノートPCなどでよく採用されるSO-DIMMである点も注意したい。
規格はDDR5で2スロットを装備。最大5200 MT/sまで対応しています。今回はSK-Hynics 32GB(DDR5-4800)を2枚用意しました。
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メモリはSO-DIMM。一般的には「ノート用」として販売されている
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DDR5 SO-DIMM(SK Hynix)
電源はACアダプタなどではなく、一般的なATX電源が利用可能。電源の自由度も幅広いですね。
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電源はATX端子
気になるのはCPU横にある、小型のファンが付いたゴツイヒートシンク。実はこの下にはM.2スロット(2本)が装備されています。
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ゴツイ M.2 SSD用ヒートシンク
M.2スロットは2本とも最新のPCIe 5.0 x4に対応。SSDによっては10000MB/sを超えるとんでもない転送速度を実現できます。(最新NVMe 5.0 SSDにてベンチマークを行っています。)
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ヒートシンク下のM.2端子
ただし、高性能SSDは熱もすごい。連続転送時は超高熱となり、サーマルスロットリング(熱を抑えるために速度を落とす状態)を頻発します。
このヒートシンクはSSDを強力に冷やし、サーマルスロットリングを防ぐためのものなのです。小さなファンでアクティブ冷却をし、さらにCPUファンも一部かぶさるため、冷却力は相当に高そう。爆熱のPCIe 5.0 SSDが実力を発揮できそうです。
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一部がCPUファンとかぶるため、さらなる冷却効果が期待できる。写真左側スロットの方が、より冷えるのかもしれない。
ワイヤレス用のM.2スロットも装備。
公式のスペック表にはM.2 2230端子のみあるような書き方ですが、購入した製品には「Wi-Fi 6E(Intel Killer Wi-Fi 6E AX1675x)」が搭載されていました!オトクです。
フロント用USBコネクタ、ピンヘッダなども一般的な構成。追加ファンのピンも2個あります。
裏面には端子類はありません。
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裏面には端子はない
背面は一般的な端子群です。
ディスプレイはHDMI2.0 ×1、DisplayPort1.4 ×1、USB-C ×1の3ポート。サウンドはLine Out、Line In、マイクが各 1。イーサネットは2.5Gbpsに対応したRJ45。USBはUSB3.2 Gen2 Type-C Port ×1(Alt DP)、USB3.2 Gen1 Type-A Port ×2、USB2.0 Type-A Port ×2 となっています。
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背面。端子類はハイスペックボードとしては一般的な数。USB 3.2 Type-Aが2個というのは、人によっては少ないかも。
CPUのスペック
CPUのRyzen 7 7745HXはモバイルグレードにおける最上位。末尾に付く記号(サフィックス)は最も電力の高い「HX」です。(無印 → U → HS → HXとなります。)
当然ながら上に行くほどハイパフォーマンスですが、電力が必要となります。ノートなら駆動時間に直結するので悩ましいところですが、デスクトップなら好きなだけつぎ込めるわけです。
Ryzen 7 7745HXの公式スペックです。
最大ブーストは5.1GHzに達し、性能はかなり高い。しかしdTDPは55W、cTDPは45~75Wとなっています。200Wを平気で消費するイマドキのハイエンドデスクトップと比べればかなり低く、扱いやすそう。
CPUコア/スレッド | 8コア/16スレッド |
基本クロック/ブーストクロック | 3.6Ghz/5.1Ghz |
L1キャッシュ | 512KB |
L2キャッシュ | 8MB |
L3キャッシュ | 32MB |
グラフィック | AMD Radeon 610M |
内蔵グラフィックはAMD Radeon 610M。高性能で評価が高い780Mと比べると2ランクぐらい落ちます。事務作業用としては問題ありませんが、グラフィック作業や3Dゲームは苦しいところ。それ以上を求めるならグラフィックカードが必須でしょう。
BD770iにはPCIe 5.0 x16のフルスペックスロットがあるので、超高性能グラフィックカードでも問題なく接続できます。
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PCIe 5.0 x16 フルスペックスロット
次のページからは組み立てとベンチマークです。
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