極小の8コアマシン!Ryzen 7 4750G と Ryzen 5 4650G で DeskMini X300ベンチマーク!

どうも、太田アベル(@LandscapeSketch)です。

AMD Ryzenの新CPU 4000 Proシリーズが発売されてしばらく経ちました。日米の検証サイトではどれも良好なスコアを上げています。

ただ、僕が組み込みたいのは普通サイズのデスクトップマシンではなく、手のひらサイズのASRockのDeskMiniシリーズここ1年使ってきたDeskMini A300はRyzen 5 3400Gを低電力モード(35W)で使用し、低騒音、低発熱、低電力でしかもけっこう速いという、いいことづくめのマシンでした。

4000シリーズ発売時はすぐにでも試したかったのですが、非公式のBIOSアップデートなら対応できるものの、ASRockからは「電源の制限があるのでおすすめできない」と発表されていました。毎日使っているDeskMiniが壊れてしまっては一大事なので、4000シリーズ正式対応となる次期モデル「DeskMini X300」を待っていたわけです。

そしてようやっと、DeskMini X300が発売となりました!待ってましたよ!

もちろんAPUは用意済み。Ryzen 7 Pro 4750G、Ryzen 5 Pro 4650Gを2つ買ってまいりました!

 

なぜいきなり2グレードも買ってきたかと言いますと、今(Ryzen 5 3400G)と同水準の消費電力と静音性が保てるのかテストし、より高性能なものを選びたかったためです。

つまり両方のAPUを試し、同水準に収まるならRyzen 7を、Ryzen 7が爆熱でうるさいようならRyzen 5を使い、余ったほうをヤフオクに(笑)というセコい作戦でございます。

もしもRyzen 5でもうるさいようなら、下のRyzen 3 4350G (4コア/8スレッド)にさらに買い換えるという、ここまでくるとセコいのかお金の無駄遣いなのかもはやよくわからない作戦になっていますが、そんな感じでいきたいと思います。

求めるポイントはDeskMini A300の時と同じ、

  • 低消費電力
  • 低騒音
  • 低発熱

です!できればRyzen 7 Proが静かに動いてほしい!

さて検証にいってみましょう!

Ryzen 4000シリーズAPUの概要

今回の新Ryzen 4000 Proシリーズの概要です。

モデル コア / スレッド クロック (最大) L3キャッシュ 内蔵GPU
Ryzen 7 PRO 4750G 8 / 16 3.6GHz (4.4GHz) 8MB Radeon Graphics 2,100MHz
Ryzen 5 PRO 4650G 6 / 12 3.7GHz (4.2GHz) 8MB Radeon Graphics 1,900MHz
Ryzen 3 PRO 4350G 4 / 8 3.8GHz (4GHz) 4MB Radeon Graphics 1,700MHz
(参考)
Ryzen 5 3400G
4 / 8 3.7GHz (4.2GHz) 4MB Radeon RX Vega 11 Graphics 1,400MHz

 

開発コード名”Renoir”と呼ばれてた、Zen 2アーキテクチャを採用した新シリーズです。

3000シリーズでは内蔵GPUを持つRyzenはRyzen 5 3400G(4コア/8スレッド)までが最高グレードとなっていました。そのため、グラフィックボードを搭載できないミニPCではこれ以上のグレードを選択することはできず、「もう少し性能がほしい」という場合は、普通のデスクトップサイズのPCを買わざるをえませんでした。

しかし今回の4000シリーズは最大Ryzen 7 PRO 4750Gの8コア / 16スレッド!

これだけのコア数があれば、写真編集やグラフィックデザイン、音楽編集なども平気でこなせるでしょう。事務作業なら必要十分というか必要ないほどの高スペックです。グラフィックカードが必要ないのなら、DeskMiniサイズで十分な性能を実現できます。

 

また名前に「Pro」の文字が入っているのも注目。

普通に使うにはほとんど違いがありませんが、AMD GuardMIが搭載され、OSのセキュアブート、メモリ改ざん保護などがAPUのみで実現できます。センシティブなデータを扱う場所でも採用可能ということです。

Ryzen 4000シリーズのソケットはおなじみAM4。Ryzen 2000~4000シリーズまで完全互換で、過去モデルを含め幅広いAPUを搭載することができるのもメリット。コスト重視なら、値段が下がった前モデルを買うことも可能なのです。

検証機材

検証機材の紹介です。

パーツパーツイメージスペック
ベアボーンASRock Deskmini X300


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PCショップ ARKで購入
CPUAMD Ryzen 7 4750G
CPUファンNoctua NH-L9a-AM4 chromax.black


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ツクモで購入
メモリCFD販売 Crucial (Micron製) PC4-25600(DDR4-3200) 16GB x2(合計 32GB)
メインSSDSamsung 970 EVO (NVMe 500GB MZ-V7E500BW)

Deskmini X300のチェック

まずは本体のチェックをしていきましょう。

Deskmini X300は”ベアボーンキット”となり、ケース、電源、マザーボードのみが組まれた状態。あとはCPU、メモリ、ストレージ(SSD / HDD)、OSが必要になります。

 

CPUファンも付属しますが、高スペックのAPUでは心もとない大きさです。それでもA300よりはヒートシンクの高さも増し、少し冷却力はアップしているようです。ロースペックのAPUまでならこれで十分かもしれません。(使用していないので冷却力や騒音については予測です)

 

今回はより確実な静音を目指すため、”静かで冷却力が高い”と評判のNoctua NH-L9a-AM4 chromax.blackを別途使用しました。

 

Noctuaのファンは、ブランドカラーであるベージュとブラウンのカラーリングが有名ですが、電飾やケース内のトータルコーディネイトを目指すと 色が非常にジャマ ファンだけ浮いてしまうため、最近では「chromax.black」という真っ黒のハイエンド・エディションが登場しています。

ヒートシンクまで真っ黒に塗装されていますが、放熱力は無塗装とほぼ変わらないという、特殊な塗装らしい。

 

標準ファンと比べるとこんな感じ。Noctuaの方が大きく、低い。高さは37mmとなっています。

 

Deskmini X300の大きさはA300とほぼ同じ W155×D155×H80mm 。

フロントパネルのデザインは飾りのナナメラインが減って、ヘアラインの入った直線的なパネルになり、全体的にスッキリとしました。アルミっぽく見えますがプラスチックです。ちょっとおもちゃっぽかったA300と比べ、落ち着いた印象となりました。

X300(左)とA300(右)の比較

ヘアライン加工が少し高級感を出している

 

マザーボードはMini-STXという超小型規格。チップセットは名前の通りAMD X300。CPUソケットはSocket AM4。

Socket AM4対応のAPUであれば、過去シリーズのRyzen 2000、3000も搭載できます。このソケット据え置き路線は、ぜひ6000、7000、8000番台と続けてほしいものです(ZEN 3採用の5000シリーズはSocket AM4確定)。

 

前面ポートはUSB 3.0(Type-A)、USB 3.0(Type-C)、マイク入力とヘッドホン出力。

 

背面ポートはUSB 2.0 x1、USB 3.0 x1、ギガビットイーサネット対応有線LANポート。映像ポートはDisplayPort、HDMI、D-subそれぞれ1ポートずつ備え、3画面同時出力にも対応します。最近は採用例が少ないD-Subにも対応しているので、古いモニタやプロジェクターも有効活用できます。

小ささを活かしデジタルサイネージ用PCとしても活用されているとか。

 

ストレージはマザーボードにM.2 SSD(NVMe)を2基、ケーブル接続でマザーボードトレイに2.5インチSSD / HDDを2基搭載可能です。すべて装備すれば4台も搭載でき、ファイルサーバとしても十分な容量を実現できます。

 

ちなみにACアダプタはA300と同じ120WのACBEL製「ASC027」。ASRock公式ツイッターで「電源の問題が・・・」といっていたので、てっきり容量アップされるかと思いましたが、据え置きですね。

Ryzen 7 4750Gはけっこう高い電力を消費するというベンチ結果もありましたので、ギリギリにならないのか検証します。

 

サイドのデザインはほぼ変わらず、CPUソケットの真上の大きなパンチホールも同じ大きさ。A300は十分なエアフローがありましたので、X300ももちろん問題ないでしょう。

 

組み立てについては長くなりましたので、別記事でレビューいたします。(Deskmini X300組み立て編はこちら

 

またDeskmini A300では「AMD CBS」というAPUの消費電力を制限し、省電力化して動かすメニューがありましたが、X300では記事執筆時点(2020/10/12)ではメニューが見つかりませんでした。BIOSバージョンはP1.40となっています。

他のマザーボードではCBSがあるようなので、アップデートされていけばそのうち搭載されると思われます。ただ、僕のように省電力サーバーとして運用を考えている人は、BIOSのアップデートを待っていた方がいいかもしれません。

※AMD Ryzen Masterでも「eco」の項目が選択できず、OS制御もできないようです。

ベンチマーク

次にRyzen 5 Pro 4650G、Ryzen 7 Pro 4750G 2つのCPUでベンチマークを取ってみました!参考に前シリーズRyzen 3 3400Gの結果も掲載します。

3DMark

ゲームベンチマークとして、ほぼ業界標準となっている3DMarkにてテストをしました。

ベンチマーク Ryzen 7 Pro 4750G Ryzen 5 Pro 4650G Ryzen 3 3400G
Sky Diver 14909 13578 11229
Night Raid 16406 15566 11551
Fire Strike 4060 3776 3204
Fire Strike Extreme 1843 1710 未計測
Fire Strike Ultra 953 877 未計測
Time Spy 1559 1440 1213

4000シリーズは総合的にスコアがアップしています。

内蔵GPUとしての能力はかなり高く、フルHDまでの軽量ゲームならAPUのみで十分にプレイ可能です。Ryzen 4000シリーズは内蔵GPUがPCIe v4.0接続となる点も、速度がアップした要因の一つでしょう。(Ryzen 3 3400GではPCIe v3.0接続)

PCMark 10

システム全体の性能を計測するテストです。

テスト Ryzen 7 Pro 4750G Ryzen 5 Pro 4650G Ryzen 3 3400G
Essentials 10538 10389 9009
Productivity 8568 8372 6631
Digital Content Creation 6740 6027 4500

PCMarkはほとんどがCPU処理のため、コア数にそのまま比例しています。特に一番処理能力が必要なDigital Content Creationで差が大きくなっています。重くなればなるほどマルチコアの強みが出ています。

Passmark

PassMarkでPC全体の能力を計測してみました。

ベンチマーク Ryzen 7 Pro 4750G Ryzen 5 Pro 4650G Ryzen 3 3400G
PassMark Rating (総合スコア) 5591 5393 3498
CPU Mark 21314 17785 9818
2D Graphics Mark 756.9 752.5 483.5
3D Graphics Mark 3010.3 2846.5 2381.0
Memory Mark 2820.9 2820.5 1734

Ryzen 7はついにCPU Markが20000越えとなりました。Ryzen 3 3400Gと比較すると実に2倍以上で、非常に高い処理能力です。少し前のハイエンドCPUと比べてもそん色ないほどのスコア。

ただ高度なグラフィックを扱う処理には、Ryzen 7とグラフィックボードがほしくなります。そうなるとGPU内蔵のRyzen 7の立ち位置とはどこになるのか、ちょっと微妙なラインだな、と感じます。

グラフィックボードを使用するほどの環境なら電源に余裕があるのでRyzen 7 3700X + GPUが選べます。こちらのほうがたぶん高速。逆に内蔵Radeonでよしとするならば、軽いグラフィック処理やCPUコアのみをガンガン回すDBサーバなどが最適です。

メニーコアのRyzenは、軽いゲーミングマシン、もしくはほとんど画面を使わないDBサーバー用途などがかなり向いている気がします。

何度も書きますが、一般的な用途であればRyzen 3でも十分でしょう。

消費電力と温度を調査

続いて消費電力と温度を比較してみました。

平均消費電力です。アイドル時はわずかに4000シリーズが低いですね。コア数が多いのに低いというのはすごい。

グラフィックがメインのゲームベンチマーク時は、またしても4000シリーズが低い。グラフィックスコアは上がっているのに、3400Gと同じ60W付近に収まります。4000シリーズの内蔵Radeon VEGAは、かなり効率があがっているようです。ちなみに電力制限なしです。

 

ただCPUメインの処理コア数に応じた消費電力となりました。特にRyzen 7 Pro 4750Gは一気に100Wを超えてしまい、ACアダプタの限界値120Wにかなり近くなります。実際、瞬間最大電力は114Wを示し、ちょっと心配になりました。クロック数はひんぱんに4.4GHz付近を示しています。

ブルースクリーンやシャットダウンは起こりませんでしたが、Ryzen 7の場合はオーバークロックや常時高負荷な処理をかけるのはやめた方がいいかもしれません。

 

続いて温度です。

こちらも上記と同じ特性を示しました。グラフィックメインの処理では、4000シリーズは性能が高いのに温度が低いです。

そしてCPUに負荷がかかる場合はコア数が多いほど温度も上がっていきます。Noctuaのファンが優秀でかなり冷えるので、Ryzen 7もどんどん回ってしまうようですね。上記に書いたように、Deskmini X300においてはRyzen 7は温度よりも消費電力が心配です。

(※3400Gはファンが違うので、対等ではないと言う点にご注意ください)

 

WTS的まとめ

ということで新生Ryzen 4000シリーズとDeskmini X300でのテストでした!

まだ省電力モードが搭載されていないためベンチマークがとれていないものの、4000シリーズは標準でもかなり電力が抑えられている感じがありました。重い処理をあまり行わないのなら、電力を絞る必要すらないのかもしれません。

ただ、Ryzen 7の突発的な大電力は注意が必要なポイントです。アダプタ耐久度に影響が出ないのか心配なところ。

ちなみに万が一の故障を考えてACアダプタだけでも予備がほしいと思い、ASRockに確認したところ「ACアダプタは単体販売はしていない」という答えでした。同性能かもう少し上位性能の代替品を探してみようかと考え中。

Deskmini X300という小型機を省電力で使うと考えると、Ryzen 5 4650GかRyzen 3 4350Gがバランス良いと言えるでしょう。

僕は最強マンセーRyzen 7 Pro 4750Gを常用します!(笑)

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