新世代NAS Synology DS920+を”オールフラッシュ”で運用レビュー!

どうも、太田アベル(@LandscapeSketch)です。

今日は高機能NASメーカー Synology(シノロジー)から発売されている4ベイNAS「DS920+」を入手しました!

現在僕は一つ前のモデルとなるDS918+」を自宅で、ラックマウント型である「RS818RP+」を会社でメイン採用しています。

どちらも2年以上まったく故障がなく、非常に快適に利用しています。特にRS818RP+は常時クライアントが20台以上接続する環境でありながら、SSDキャッシュ機能によってスピード低下も軽微に抑えられています。

さて、CPUが新世代へと移ったDS920+はいかなる進化を遂げたのか、さっそくレビューしていきますよ!

キープコンセプトな外観

まずは外観です。

一目見た状態ではどちらがDS918+でどちらがDS920+かわからなくなるほど。ほぼそっくり、というかまったく同じ。

大きさは全く変わらず、全面、サイド、背面ともデザインの変化はありません。NASは裏方の機材で毎日眺めるわけではありませんので、中身が進化すれば、見た目はそのままでも何も問題は無いでしょう。

一世代進化した中身

続いて中身です。CPUの世代が変わり、それに伴い全構成がアップグレードされています。

CPUはApollo Lake世代だったCeleron J3455から、1.5世代ほどアップしたGemini Lake Refresh世代 Celeron J4125へと進化しました。

CPU比較

DS918+ DS920+
ブランド名 Celeron J3455 Celeron J4125
世代 Apollo Lake Gemini Lake Refresh
発売 2016年 2019年
コア数 4 4
スレッド数 4 4
ベースクロック 1.50GHz 2.00GHz
バーストクロック 2.30GHz 2.70GHz
キャッシュ 2MB 4MB
TDP 10W 10W
内蔵グラフィックス インテル® HD グラフィックス 500 インテル® UHD グラフィックス 600
グラフィックスベースクロック 250 MHz 250 MHz
グラフィックスバーストクロック 750 MHz 750 MHz

同じ4コア/4スレッドでTDP 10Wのパッケージですが、ベースクロックが500MHz(1.50GHz → 2.00GHz)、バーストクロックが400MHz(2.30GHz → 2.70GHz)へとかなり高められました。さらにキャッシュが従来の2MBから2倍の4MBへと増量され、処理速度に期待ができます。

内蔵グラフィックスも世代が新しくなっていますが、DS920+から直接映像を出すことはできないため、この部分はそれほど恩恵はありません。

 

大きなポイントがメモリの世代。DS918+はDDR3Lでしたが、DS920+ではDDR4対応になり、メモリ速度が最大2400MT/sにアップしました。(※DS918+でもLPDDR4がサポートされていましたが、単品での販売例はほとんどなく、かなり特殊な用途に限られるメモリです)

 

総合的に、すべてのパーツでワンランク底上げされたというイメージです。

ファイル共有など、ごく基本的な機能では気づくことはないと思いますが、例えば仮想PC機能を使ったり、ウェブサーバ機能を使ったりすると、速度の違いが出てくるはずです。

テストではそのあたりも気にしてチェックみます。

高速、高耐久SSD SAT5200

そしてもう一つ、Synology純正 超高耐久SSD「Synology SAT5200」を今回は使用します。

 

2.5インチSSDは無名メーカーの激安品から、知名度がある大手品まで、かなり幅広く販売されています。ただ、ほとんどのSSDが一般PC用、つまり特定の時間のみ(日中の8時間など)の短い利用を想定して作られたものになります。

コンシューマ用SSDの一例

 

NASは基本的に24時間365日稼働し、常に何らかのデータが読み書きされる状態に置かれます。

熱に対する強さはもちろん、細かく大量のデータを安定してさばくことができ、さらにエラー耐性も高く、故障も起こりにくくなければならないという非常に厳しい品質を求められます。

Synology SAT5200はNASを熟知するSynologyが作ったもの。当然のことながら、その高い要件をクリアした、エンタープライズグレードです。

その自信は、24時間365日、1.3 DWPD(1日あたりの書き込み容量)の「非常に重い書き込み」を想定した上で、5年の長期保証という部分に現れています。コンシューマ製品とは安心感が違うわけです。

 

DWPDとは?

DWPD(Drive Write Per Day)の略で、1日の書き込み許容量です。一般PC用はTBW(1ドライブ全体の総書き込み容量限界 ≓ 寿命と想定される容量)で表示されます。日々の書き込みデータが非常に多いNASでは、1日単位の書き込み量が重視されます。

企業データを保存するNASにコンシューマSSDを使用すると、数ヶ月で寿命に達してしまう場合もあります。

 

5,000円前後の480GB SSDでは想定書き込み量は 300TBW 程度が一般的です。それに3年保証(1095日)がついているとすると、約 0.571 DWPDとなります。

SAT5200 480GBの場合、1.3 DWPD で 5年保証(1825日) がつきますので、TBWに換算すると 1139 TBWと換算することができます。実に4倍です。

書き込み許容量は624GB/日となり、1日でドライブまるごと1.2回書き換えられる計算になります。

巨大な動画データを頻繁に書き込むような環境でも、安全に運用できると保証しているのです。

Synology SAT5200 一般PC用480GB SSD
容量 480GB 480GB
保証 5年 3年
DWPD 1.3 0.571
TBW 1139 300
1日書込み想定量 624GB 273GB

(計算はこちらのページを利用しました:https://wintelguy.com/dwpd-tbw-gbday-calc.pl)

 

数字で見ると、SAT5200がいかに高耐久なのかがよくわかります。

また停電保護回路があるのも心強い。

一般SSDでは、停電になると瞬時に停止してしまい、書き込み中のデータはすべて消失、もしくは破損します。(UPSなど、電源保護がない場合)

SAT5200はドライブ本体に電力損失保護回路を内蔵し、停電発生時にも自分の電力だけでわずかに動くことができます。その間に書き込み中のデータを NANDフラッシュに保存できるのです!天災の多い最近では、かなり重要な機能といえそうです。

 

非常に強力な機能を搭載していますが、難点は価格。480GBで3万円半ばとそれなりに高額。一般PC用は500GBで5,000円前後なので、5~6倍の高価格となっています。個人で気軽に使えるものではありません。

激しいワークロードを想定した企業NASで、高速かつ業務中に絶対にエラーを発生させないために使う、最終防衛用SSDなのです。

組み立て

では組み立てていきます。

新品のSynology NASの組み立てはとてもカンタン。

まずドライブトレイを引き出し

 

SSDをネジで固定します。2.5インチの場合、トレイ左右のステーを取り除く必要があります。

 

そのまま戻して、カチッとロックレバーを下げれば完成です。

 

もしメモリを増設する場合はドライブトレイをすべて取り出せば、メモリスロットが見えます。ここに追加すればOK。初めに増設した方がラクですね。

標準では4GBを搭載しており(交換不可)、追加で4GBの計8GBが最大容量となります。

 

DDR4 SO-DIMMならだいたい互換性があるとは思いますが、相性問題など余分な手間をかけたくない場合は、Synology純正メモリがおすすめです。

 

SSDキャッシュを構成できる、M.2 SSDスロットは底面にあります。DS920+はNVMe SSD専用となるので、購入時はご注意を。

 

ネットワークにつなぎ起動します。「ピーッ」と起動完了の音がしましたら、ブラウザで「http://find.synology.com」へアクセスすると、なんと準備中の自分のNASがいきなり出現!そのあとグラフィカルなUIでカンタンに初期設定ができます。

専用ソフトもいらないという、非常に簡単な接続方法なのです。

 

各ページの説明はとても丁寧で、NAS初心者でも恐れることなく設定できます。

 

すべてがキビキビ動く!

さっそくテストしていきます。

オールフラッシュといえど、そもそも1Gbpsというネットワークがボトルネックになるので、体感差はそれほど出ないのでは?と思っていましたが、意外に差がありました

まずDSMに入ったときにあらゆる項目がパッと表示されるので、とにかくサクサク動いて気持ちがいい!

HDDのみの構成では、ユーザー登録や共有設定を出そうとするとクリック後に少し待たされますが、オールフラッシュでは瞬時に表示されます。ファイル共有やiSCSIは、数千個のファイルが入ったフォルダもサッと表示されストレスがありません。全体的にかなり体感差はある、と言えます。

アプリケーションのインストールも速く、多数のアップデートがあっても速度の低下はわずかです。

 

ファイルの書き込み速度ももちろん高速化。同じ1Gbpsの回線とは思えません。転送速度は変わりませんが、一つ一つのファイル書き込み完了が速いため、エクスプローラがもたつかないのが要因でしょう。テキストログデータなど、小さく大量のデータが特に速いですね。

iSCSIディスクを作成し、ベンチマークを取ってみました。

シーケンシャルアクセスは完全にネットワークの上限に達していて、数字は多少違うものの、誤差程度です。それぞれ120MB/s平均出ています。

それよりも大きな点は4KiBバイト程度の小さなアクセスが、DS918+ HDDでは平均読み/書きが80MB/sに対し、DS920+ SAT5200では110MB/sと大きく改善

4KiB Q1T1では10MB/sだったものが、18~21MB/sと実に2倍の速度に達しています

つまりSAT5200 SSDは細かなファイルの処理に非常に強く、安定した高速性を保つことができる、ということがわかります。多人数でのアクセスにかなりの威力を発揮するでしょう。

オールフラッシュで仮想PCが実用的に!

また特に差が大きいのが仮想PC

SynologyのNASでIntel CPU(Celeron、Core i3など)を搭載したものは、「Virtual Machine Manager」パッケージを使い、NAS内に仮想PC環境を構築できます。WindowsやLinuxなどが動作可能です。

動作可能ではありますが、たとえばHDDを使うDS918+でWindows 10を使うと「ずっしりと重い」です。まるで10年ぐらい前のPCに無理やりWindows 10をインストールしたかのような遅さで、ちょっとした作業もつらい。

マイクロソフト エクセルなんかを立ち上げようものなら、表されるまでに10秒近くを要し、セルの移動さえ紙芝居のようです。

また、Windowsが動いているあいだは全HDDが激しいシーク音をたて、熱暴走しないか心配になるほど。通常のファイル共有までだいぶ遅くなってしまいます。大型のWindows Updateが始まると、それこそ数時間かかります。

複数台のWindowsをNASに集約したら便利で安全だなと考えたことがありましたが、なかなか無理な注文でした。GUIがないLinuxサーバぐらいしか実用にはなりませんでした。

 

これがDS920+とSAT5200になると体感速度が全く違います

Celeronなので速度はそれなりですが、起動速度もそこそこで、軽作業なら実用的です。エクセル、ワード、フリーオフィスツールのLibreOfficeなどを動かしましたが、およそ実用的な速度で動きます。

1台のWindows 10ならオフィスワークぐらいならこなせる感じでした。(CPUが4コアなので、複数OSはやはりきびしいですが)

実用的な仮想PC運用を考えているのなら、オールフラッシュは最低線だと感じます。

動作音がほぼ無音

DS918+のときからシステムファンは十分に静音です。それはDS920+になってもかわりません。

さらにオールフラッシュとなりディスクの回転音が消えると、本当に動いているのかわからないほどの静けさになります。家庭のかたすみで動かすNASとしても最高じゃないでしょうか。(価格が許せば、ですが)

WD REDもかなり静かなディスクですが、無音のSAT5200とは比べようもありません。4台のHDDでは共鳴も発生するので、非常に静かな環境ではやっぱり音が気になります。オールフラッシュNASをいったん使ってしまうと、後戻りはできませんね。(笑)

WTS的まとめ

新世代になりワンランクスピードがアップしました。それよりも、今回初体験のオールフラッシュの速度は全く別次元です

SAT5200 4本では金額的にかなり高額なってしまいますが、コンシューマ用SSDも併用したりすれば、もう少しコストを下げられると思います。(データの重要度を考えながら。RAID 10でSAT5200グループとコンシューマグループと分けるなど)

業務用DBや商用写真など、止まってはならないデータを高速化したい場合こそSAT5200を採用しておきたいところ。純正なので時間のロスとなる相性問題もなく、年単位での安心が手に入るはずです。

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