「デスクトップPC」といえば、ほんの10年前までは巨大な”タワー型”のもの、薄型ですが高さ30cmほどある”スリム型”のどちらかでした。
最近は非常にさまざまな形がでてきており、片手サイズのASRock DeskMiniシリーズやIntel NUCシリーズが出てきたり、USBスティックのような「スティックPC」まで登場しました。
さて、最小となるスティックPCでは、USBポートが1つしかなく、電力も放熱力も弱いのでCPUパワーも最小のものが定番。メモリやストレージ容量の追加はまったくできません。
Intel NUCはUSBポートも多く、映像出力も複数あり、ストレージも拡張できますが、120x120x50mmほど。机に置けばそれなりに主張する大きさになります。
- スティックPCよりは大きく
- NUCよりは小さく
- CPUパワーも事務作業が普通にできるぐらい
- USBポートは複数ほしい
- できれば2画面出力
- ストレージも拡張できればうれしい
非常にニッチなこの要望ですが、なんとピッタリのマシンがありました!
それが今回購入した「Mele Quieter3Q」。
2.5インチSSDと面積は同じぐらい、厚さは2枚分ほどの小ささで、小さく薄い。ですがCPUにはCeleron N5105(4コア/4スレッド – Jasper Lake)を搭載し、8GBメモリを搭載。Windows 11も満足に動く上、なんとHDMIポートが2ポート!
事務処理ならまったく問題なし。なんなら軽い2Dゲームもプレイできてしまうほどの実力を持つ、想像以上に使える極小Windowsマシンなのだ!
さっそく実機レビュー!
極小サイズ!価格もおてごろ
さて届きました「Mele Quieter3Q」。
Amazonで32,999円に特別割引クーポン 6,000円(実質26,999円)で購入しました。(2022/11/10購入時点の価格)
Amazonでは複数の出品者から同じものが出品されていますが、なぜか価格がかなり違います。こちらのリンクのものがセール時に一番安く、VESA取り付けプレートなど付属品もしっかり付いていました。
値段はコロコロ変わっているようなので、27,000円を1つの目安にされたらいいかとお思います。
付属品をチェックします。
- 本体
- 専用電圧のACアダプタ(USB Type-Cと同一形状ですがUSB規格ではない!)
- ACアダプタ変換プラグ(日本の2ピン仕様)
- VESA取り付けプレートとネジ
本体はまさに手のひらサイズ!
スティックPCほど極小ではありませんが、十分に小さいです。
サイズは131mm(奥行き) x 81mm(幅) x 18.5mm(高さ)。iPhone 13 Proや2.5インチSSDなどと面積は同じくらい。
ボディは全体が金属製で、天板には細かなスリットが入っています。ファンレスで、放熱は天板からの自然放熱のみに頼るようです。
充実のポート類
うれしいのは拡張ポート。このサイズにめいっぱい詰めこんであります。
- USB3.0(Type-A) ×4
- HDMI ×2
- microSDカードスロット
- ギガビットLAN端子(RJ-45)
- 3.5mmオーディオジャック
- DCポート(USB Type-C形状ですが、電圧が独自規格でUSB充電機は使えません)
USBは4ポート(サイド3ポート、背面1ポート すべてUSB 3.2 Gen1 = 5Gbps)装備。キーボード、マウス、USBメモリなどをハブなしでつなぐことができます。
さらにHDMI端子は2ポートあり、同時出力も対応。Celeron N5105の仕様を見ると、最大4K@60Hzで出力も可能のようです。4K@60Hz 1画面は出力が確認できました。4K 2画面の環境は用意できず、未確認です。
1GbE対応の有線LANも搭載。
またWi-Fi 6、Bluetooth5.2に対応。ワイヤレス接続もフル装備です。
右サイドにはケンジントンロックも装備。この小ささなので盗難が心配になりますが、最低限の防御はできそうです。
小さくてもなにもあきらめない拡張性ですね!
注意したい背面のType-Cポートと天板の熱
注意したいのは背面のType-Cポート。
最近はノートPCなどでもUSB Type-Cで充電できる機種が増えていますが、Mele Quieter3QはType-C形状なのにUSBと互換性がないので気をつけたい。
本体上面に注意のシールが貼ってありますが、英語なので読まない人も多いはず。
実はここに「USB Type-C(USB PD)と互換性はないから、付属のACアダプタ以外絶対につなぐな!」と非常に重要なことが書かれています。(2段落目)
付属のACアダプタは12V/24Wと、確かにUSBでは見ない電源規格。専用品と考えた方がいいでしょう。
スマホなど一般的なUSB機器の充電に使うと故障するかもしれませんので、絶対に使わないようにしましょう。
このような独自規格をType-C形状にするのはあまり感心しませんね。間違って差し込んでしまう人もいそうです。
また天板のシールには「非常に熱くなるから気をつけろ」とも書いてあります。後述しますが、負荷をかけると本気で熱くなります。注意しましょう。
電源の容量にも注意
電源でもう一点気をつけたいのは、電源の総容量。
付属のアダプタは12V/2A=24Wという比較的省電力なもの。Celeron N5105は省電力CPUといえど、単体で最大10Wを消費します。(Intelの公式仕様書より)
つまりCPUが最大に動作している場合、CPUだけで総電力の半分を消費してしまいます。
大容量の電力を使う作業(たとえばUSB接続のDVD-Rでディスクを焼く、USB HDDを3台つなぐなど)過剰な負荷をかけると、動作が不安定になったり、最悪、回路が故障することも考えられます。
USB端子には必要最小限、かつ電力をあまり必要としない機器のみにしたほうがよさそうです。
説明書には「NVMe SSDを拡張する場合には3W以下が望ましい」とこれまた英語で書いてあります。それほど微妙なラインのようです。(M.2 SSDの消費電力に注意するなんて初めてです。)
ポート類は豊富でありがたいのですが、もっと余力のある電力設計はできなかったのでしょうか?熱の問題?
というかType-C形状にするのなら、一般的に流通している35W、45WほどのUSB PD対応アダプタを利用できたのではないでしょうか?コストを重視しすぎたのか、設計がめんどうだったのか・・・謎が多い電源周りです。
Windows 11の動作は軽い
なんだか長々と注意ばかりの解説になりましたが、いよいよ使ってみます!
この値段ですがなんとWindows 11 Proが入っています!これはすごい。
リモートデスクトップサーバーや、Active Directoryへの参加など、ビジネスシーンで必要とされる機能が全て使えます。事務用端末としてしっかり役立ちます。
ただし、この値段。「まともな正規品なのか?」と少し懐疑的に見てしまいます。ここはメーカーを信じるしかありませんが。正規品のシールは貼られています。
Windows 11の基本的な動作は十分まとも。Celeron N5105と8GBメモリで、エクセル、ワード程度ならサクサクと開き、作業も軽快です。
ブラウジングも実用的な速度。10タブ程度なら読み込み、操作ともにスムーズです。
YouTubeの動画、Amazon Primeも再生しました。CPUに動画支援機能があるので、どちらもスムーズです。動画再生マシンとしても満足できそうですね。
デジタルサイネージの出力マシンとしても有望です。
ベンチマーク
いろいろなソフトでベンチマークを取ってみます。
3DMark
ゲームベンチマークとして、ほぼ業界標準となっている3DMarkにてテストをしました。
ベンチマーク | スコア |
---|---|
Night Raid | 3478 |
Wild Life | 2336 |
Wild Life Extreme | 678 |
軽量なDirectXを使うテストのみですが、全体的にぎこちない映像です。というかほぼコマ送りです。「すっごいがんばってます」感がありありと感じられます。
3Dゲームに関してはさすがに無理でしょう。
PCMark 10
システム全体の性能を計測するテストです。
テスト | スコア |
---|---|
総合 | 2230 |
Essentials | 4858 |
Productivity | 3123 |
Digital Content Creation | 1986 |
「まともな作業ができる」とされる総合スコア2000はしっかり超えています。
少し前の低グレードノートPCでは2000ポイントすら超えられなかったものが多いので、この小ささでさらにファンレスでクリアしているのは、評価に値します。
ソフトの立ち上がりこそ遅さを感じますが、立ち上がってしまえばけっこう軽快。Officeなどで困ることはないでしょう。
軽量ゲームをプレイしてみる
軽量なゲームを2種類プレイしてみます。
1つめは完全2D映像の「Vampire Survivors」。ちょっと懐かしいドット絵の映像ですが、レベルが上がると画面に数百体の敵が押しよせ、それなりに負荷があります。
Quieter3Qはそれほど遅さを感じずプレイできました。画面設定はFULL HD(1920×1080)です。ただし大量の敵が出てくるとぐぐっと遅くなるときもあり、苦しさは感じます。
次に「Dorfromantik」。
3D映像のボードゲームで、動きは激しくありません。比較的軽量な3Dゲームとなります。
プレイしてみましたが、まずFULL HDでは非常に苦しいです。操作はガクガクとしていて、マウスの移動にも苦労します。全体がコマ送り状態です。
エフェクトを切ったり調節しましたが、なんとか遊べたのは、全エフェクトカット、1280×960ピクセルまで落としたところでした。それでもコマ落ちはけっこうあります。
3D性能は「映ればうれしい」程度に考えるべきでしょう。軽量なゲームといえど、快適なプレイは望めません。
天板はかなり熱い!
ゲームのような高負荷なソフトを動かすと、天板がかなりの熱を持ちます。
手で触れると「あつっ!!!」と声に出してしまうほどですので、小さな子供がいる場合は絶対にさわらせないように注意したい。
さわり続ければ低温ヤケドではなく、普通にヤケドになるでしょう。
ある程度の負荷をかけ続けるなら、回路の保護のためにも大型ヒートシンクやファンを取り付けたいところ。良さそうな物を探したら、また記事にします。
WTS的まとめ
ということでMele Quieter3Qの全体的なレビューをしてみました。
僕としては「自作の軽い2Dゲームを展示するための機械」として選んだので、これで十分満足です。むしろWindowsがかなり快適に動くことに驚いたほど。
USBゲームコントローラが2本つなげますから、ハブも必要ありません。
それにこの小ささはすばらしい!ポケットに入るほどですからどこへ持って行くにも苦労がありません。
サイネージ、ソフト展示、ロボット制御用など、ニッチな分野でかなり需要がありそうだな、と感じました。
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