nVidia GeForceとQuadroを比べる際、安定性とかOpenGLのサポートがメインの検討要素となりますが、10bit(各色10bit / 10億色)表示ができることを挙げる人も多いでしょう。
Photoshopなど、写真をメインに扱う業務となると、色の正確さや表示できる色の幅広さは非常に重要になります。8bitでは最大色数が1677万7216色ですが、10bitでは10億7374万色以上もの色が表示できるのです!
以前はQuadroシリーズしかサポートしていなかったこの10bit表示ですが、実は少し前からGeForceでも出力できるようになっています。
今日はGeForceで出力できるかどうかの確認方法、設定方法をご紹介します。
10bit表示はいろいろな表現がありますのでまとめておきます。
・各色10bit対応
・10億色表示
・30bit対応
・10 bpc(10bit per pixel)これらは基本的に全て同じ機能を指しています。各
色10bit = 光はR,G,Bの3色を使うので合計30bit = 30bitは2の30乗となる = 10億色(1,073,741,824)が表現可能このような計算になります。当記事では「10bit表示」と表記いたします。
まずはディスプレイを調べよう!
まずは手持ちのディスプレイをチェックしましょう。
10bit表示は、デザイン用とかゲーム用など、ちょっと特殊なジャンルのディスプレイしか搭載していません。ディスプレイが対応していなければそもそも表示不可能です。
メーカー公式サイトで型番を調べて、「10bit対応」とか「30bit表示可能」などと明記されていれば、対応しています。
今回テストする機種は、以前レビューしましたI-O DATAの「GigaCrysta EX-LDGCQ241DB」。
お手頃な価格の23.8インチで、WQHD表示、美しいAH-IPS液晶、HDMI x3 + DPポート、リモコン付属などなど、便利機能満載でお気に入りのディスプレイです。
ただしこのディスプレイはちょっと特殊で、10億色入力は可能ですが、同時表示は1677万色までとなっています。
つまり10億色が入力されたら、その中で優先的に表示すべき1677万色を選択し、表示するよ、という意味です。(色の選定は自動でディスプレイが計算します)
疑似10億色、とでもいいますか。使える色は10億に満たないので、なめらかな表示が必要な部分に、なるべく多くの色を割り当てるようなイメージです。
真に10億色表示ができるディスプレイは「デザイン用ディスプレイ」「フォトレタッチプロ用」などとされ、20万円、30万円と高額になりがちです。お手頃に買えるような機種は見当たりません。
ちなみにこちらは本気の10億色プロ用ディスプレイ、EIZO ColorEdge CG279X。実売23万円前後。これでも比較的お手頃な部類。
とはいえ、ディスプレイに10億ピクセルがなければそもそも同時に全ての色を表示する必要はないわけで、1677万色でも間に合うのです。ちなみに10億ピクセルとなると、横6万ピクセル、縦2万ピクセルほどという、誰も見たことがない怪物ディスプレイになります。(笑)
そう考えると、写真編集に関しては1枚ごとに色の切り替えが起こるので、1677万色でもけっこうなめらかに見えるのではないでしょうか。
「10bitを体験してみたいな~」と思うときは、今回のGigaCrysta EX-LDGCQ241DBのような疑似10億色タイプで、安めに実現するというのもアリだと思います。(ちなみにアマゾンで27,800円 -セール価格- )
10bit表示に必要な4条件
10bit表示には4つの条件が揃う必要があります。
- 10bit対応ディスプレイ
- 10bit対応グラフィックボードと対応ドライバ
- 10bit対応アプリケーション
- 10bit以上の色を含んだ写真データ
まずディスプレイは当たり前ですね。これがなければ始まりません。
今回は上記のGigaCrystaで実験します。
グラフィックボードはZOTACのGeForce RTX 2080を使用します。ただし、手もとにあるのがこれだけだったので使用していますが、10bit表示をするだけならこんな高額なボードは必要ありません。GeForce GT 1030など、1万円以下の安いグラフィックボードで大丈夫です。
加えて、最新のGeForceドライバが必要になります。古いドライバでは使えない場合がありますので、先に更新しておくといいでしょう。(古いドライバではそもそも10bitの設定項目が出てきません。)
次にアプリケーション。
実はアプリケーションも対応していなければ10bit出力はできません。フリーソフトやオンラインの画像エディタでは、ほぼ対応していません。
Adobe PhotoShopやAdobe Premiere Pro、foundry Nukeなど、プロ用のソフトが必要になります。(プロ用写真編集ソフト Adobe Lightroom は、なぜか対応していませんでした。意外ですね。)
最後に画像データ。
カメラのデータに多い「JPEG」では仕様上8bitまでしか対応しておらず、JPEG形式ではなにをどうがんばっても10bit表示をすることはできません。
カメラのデータを直接出力する「RAWデータ」なら、カメラが捉えた色情報をすべて記録していますので、10bitを活かすことができます。他にも10bitデータに対応している画像形式はいくつかありますが、紹介は割愛します。カメラの仕様をご確認ください。
JPEGでは10bit表示できない、ということだけ覚えておきましょう。
GeForceの設定
続いてGeForceの設定です。
GeForceドライバを開き、カラー設定を見つけます。
条件が揃っていれば「出力の色の深度」が選択可能になり、下記のように10 bpcが設定できます。これで完了です。
アプリケーションの設定
最後にアプリケーションの設定です。
今回はPhotoShop CCです。(バージョン21.0.1)
環境設定→パフォーマンス→グラフィックプロセッサーの設定にある「詳細設定」をクリックすると「30bitディスプレイ」という項目が出てきます。チェックを入れ、念のためPhotoShopを再起動します。
はっきり言えば違いがわかりません(笑)
ついに10bit表示になりました!さあ、夢の10億色の世界へダイブイン!!!
・・・と意気込んで目をこらしてみたものの、どう変わったかと言われれば、むしろ「ぜんぜん変わらない」。「2台並べてもたぶんわからない」「いや正直まったく変わらないネ」というレベルで変わりません。
もちろん僕の目の精度が非常に低いことは認めますが、たとえば256色表示から1677万色表示になったときのような「別世界感」はまったくありません。
グラデーションが「言われてみれば、きもーちなめらか・・・かも」みたいな感じです。8bitと10bitを並べて「どっちだ」と言われても、9割ぐらいの人は当てられないと思います。
グラデーション部分に目をすごく近づければ、なんとなくわかる程度。
で、こちらが実機の映像です。
Photoshopで10 x 10cm 300dpiの画像を作り、そこに白からグレーに変わるグラデーションレイヤを作りました。
画面に近づくとモワレがかなり発生してしまうのでわかりづらいとは思いますが、グラデーションの階調が「段」になっているところに赤線を入れてみました。
8bit、10bitでは細かさがけっこう違うのがおわかりになるでしょうか。真の10億色ディスプレイならさらになめらかになるのかもしれません。
安い機材で10億色を試してみて
グラフィックデザイナーや写真家など、鋭い感性と良い目を持っている人が、なおかつ4Kや5Kで表示していれば「やっぱり10bitは違うな~」と感じるんでしょうね。
ちょっとした写真編集をする程度なら、余分なお金をかけてまで増設する機能ではないと感じました。(あなたが4色色覚を持っている場合を除いて)
逆に、もし本気にデジタル写真を極めたいなら、10bitというキーワードはまず押さえるべき機能になるでしょう。
WTS的まとめ
写真家はけっこう導入しているという10bit表示が、比較的手頃に表示できるようになってきたのはうれしいですね。
とはいえ、やっぱり超高度な精度を求めるプロ用の機能だなと感じました。ディスプレイからカメラから、高級な機材を揃えないと真価は発揮できないと思います。
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