今日はLenovo ThinkPadシリーズの最高性能クラスに位置する、ワークステーション級ノートPC「ThinkPad P1 Gen 7」を借りて参りました!
さまざまな会社から「ワークステーション級ノートPC」は出ていますが、
- 機能は豊富だが、すごく厚くて重い
- 薄いけれど、ワークステーションと言うにはちょっともの足りない
このどちらかが多い印象。
なるべく薄くて、軽くて、CPUもグラフィックボードもメモリもストレージもしっかり高機能なPCがほしい!
とよくばりな要望にヒットするのが、Lenovo ThinkPad P1シリーズです!
CPUには最大Intel Core Ultra 9まで、グラフィックはGeForce RTX 4070またはNVIDIA RTX 3000 Ada 世代 Laptop GPUというハイグレードパーツを選択可能。それでありながら、厚さわずか17.05mmに抑えたという鬼のスリムプロダクトなのです!(※17.05mmはノンタッチ液晶の場合)
もちろん重量もこのクラスとしてはかなり軽量。標準モデルでは約 1.86kgからとなっており、「重い」の目安となる2kgを大きく切っています。(※1.86kgは標準仕様、ノンタッチ液晶の場合)
加えて、本体中央に美しく収まるテンキーレス キーボードがすばらしい!「15インチ以上のPCは、なんでみんなテンキーを付けるんだ!」とお怒りになるキーボード好きにも安心です。
ただ、今回から標準となる感圧式クリックパッド(タッチパッド)は好みがだいぶ分かれそうな雰囲気です。後ほど本文で使い勝手を紹介します。
前世代同様、性能は非常に高く、高グレードのGPUを搭載すればグラフィックや映像、AI処理にも余裕のある性能を実現します。
前世代のGen 6と比較しながら、細かな使い勝手をレビューしていきます!
- リアルワークステーション級の性能ながら17.5mm、1.86kgからの薄型軽量
- グラフィックワークに耐えうる高品質液晶
- 大画面ながらテンキーレスキーボードを装備
- 騒音を可能な限り抑えた新型ファン
- 高音質なスピーカー
- 本体価格がかなり高額
スペック
レビュー機のスペックです。
項目 | スペック |
CPU |
Intel Core Ultra 7 155H
|
メモリ | 64GB(CAMM2) |
ディスプレイ | 16″ WUXGA液晶 (1920 x 1200) IPS, 光沢なし, マルチタッチ非対応, 100%sRGB, 400 nit, 60Hz, ブルーライト軽減パネル |
グラフィックス |
NVIDIA RTX 1000 Ada(AD107)
|
ストレージ | 256GB M.2 NVMe SSD |
デザイン
天板はさらっとしたマットブラックの“ThinkPad仕上げ”。落ち着いたビジネスマシンという雰囲気。
このクラスとしてはかなり薄型なので、「いかにもワークステーション」といった威圧感は感じません。ThinkPad Eシリーズなどと比べても、それほど変わらない大きさです。
加えて、前世代よりもひとまわり小さくなっており、16インチですが15インチクラスの大きさに見えるほど小型化されています。
前世代(Gen 6)と比較するとこれほど違います。特にディスプレイ上下のベゼル幅に注目です。どちらも16インチなのに、ひとまわり以上小型化しています。
小さくなった理由は最近Lenovoの機種に採用されている”はみだしカメラ”。
周りのベゼル部分からはみ出すようにカメラが取り付けられ、中央が盛り上がったような形になっています。
初めて見ると違和感を感じますが、開けるときに指が引っかかりやすく、実用面でも意外に便利なのです。またこのカメラの高さ分のベゼルが小さくなるため、5mm以上の大幅なサイズダウンが実現できています。
ボディはCore i9、GeForce RTX 4070まで搭載できる16インチの機種としては、異様なまでのスリムさ!最厚部17.5mmという信じられない薄さです。カバンの収まりもヨシ!
底面には大きな吸気口と、大きなファンが2基見えます。最高グレードのパーツを搭載しても問題なく冷却できます。
前世代(Gen 6)でも非常に静かなファンでしたが、今回も変わらず静かで、動画編集や3DCGを扱っている最中でも集中力を途切れさせません。
ディスプレイ
ディスプレイは3種類から選択できます。
16″ WUXGA液晶 (1920 x 1200) IPS, 光沢なし, マルチタッチ非対応, 100%sRGB, 400 nit, 60Hz, ブルーライト軽減パネル搭載 | ★レビュー品 |
16″ WQXGA液晶 (2560 x 1600) IPS, 光沢なし, マルチタッチ非対応, 100%sRGB, 500 nit, 165Hz | |
16″ WQUXGA OLED(有機ELディスプレイ) (3840 x 2400) 反射防止/汚れ防止, Dolby Vision™, マルチタッチパネル, 100%DCI-P3, 400 nit, 60Hz, ブルーライト軽減パネル |
レビュー機は「16″ WUXGA液晶 (1920 x 1200) IPS, 光沢なし, マルチタッチ非対応, 100%sRGB, 400 nit, 60Hz, ブルーライト軽減パネル搭載」を選択。
十分な明るさで、見やすい液晶です。ただ、16インチクラスは物理的な画面が大きいので、目を近づけてよ~く見ると文字のドット感を感じます。
バランスが良いのが中間のWQXGAです。文字がより高精細でなめらかになり、過去のアプリケーションでも小さくなりすぎず満足感があります。またWQXGAのみ165Hzの高速液晶となっており、動きがなめらかです。カーソルが見やすいと感じる人も多いでしょう。
CGや映像を扱ったりする場合は、4Kを選ぶと作業がはかどります。もちろん価格は大きく上がるので、機能と価格の相談になりそうです。
16:10のディスプレイは上下が広く、エクセルなども見やすい。左右の視野角は非常に広く、急な角度からのぞき込んでも色が破綻しません。
全機種ファクトリー・カラー・キャリブレーションが行われ、非常にあざやかで、深みのある色合いです。複雑な花の色でも、わずかな陰影をも感じさせる色合いです。
4K OLEDならさらにコントラストが強まり、あざやかでしょう。デザインワークフローをモバイルで行いたい人にも、しっかり応えてくれます。
ディスプレイは180度開くことができます。複数人で覗くような使い方も可能。
ポート類
サイドのポート類は標準的な数を装備。
USBはUSB 3.2 Gen1対応のType-Aが3つ、Thunderbolt 4 Type-Cポートが2つ、HDMIポート1つ、SDカードリーダー、3.5mmイヤホンジャックが装備されます。
残念ながら有線LANポートは付いていないので、必要な場合はUSBなどの拡張機能を用意したい。Lenovoでも純正オプションとして販売されています。トータルコーディネートが可能。
Lenovo USB Type-C – イーサネットアダプター |
完璧なキーボード
「ノートPCは、画面が大きくなると、なぜみんなテンキーを付けるのか。」
この疑問を感じる人は少なくありません。
15.6インチ以上のノートPCでは、なぜかほとんどの機種がテンキーを搭載します。16インチでテンキーレスキーボードのノートPCは、数機種しかありません。なぜかLenovoのPCの中でも、この「ThinkPad P1」しかないという不思議。
テンキーはベンリですが、数値入力をたくさん行う場面がないと、それほど使いません。その上キーボードが左寄りになり、「画面と体の中心を合わせたい!」と思う人には大きなデメリットです。(僕です)
ThinkPad P1 Gen 7は16インチですが、めずらしいテンキーレス!
整然と中央に収められたキーボードは、キーの配置もサイズも、極めてオーソドックス。
キーは最近のThinkPadに搭載される薄型のもの。薄型ですが、キーストロークは1mm以上あり、カタカタと適度な節度感があります。長文でも飽きがこない快適な打鍵感。
右下のCtrl横には最新のWindowsに対応したコパイロットキーが設置されます。AI PCにも対応していることをアピールしています。
他メーカーのノートではFnとのコンビネーションキーになっていることが多いPage Up / Downが、カーソルキーの上についているも独自の工夫です。エクセルなどをよく使う人はベンリでしょう。
左下にはCtrl、Fnキーがあります。Gen 6まではFnが左側、Ctrlが右側でしたが、Gen 7からは他メーカーと同じようなCtrl左、Fnが右の並びに変更されました。他メーカーPCから乗り換えるときにスムーズになるでしょう。
もちろんBIOS(UEFI)にて、Ctrl と Fnの機能を入れ替えることができます。
右上には電源スイッチを兼ねた指紋認証センサが付いています。Windows Helloに対応しており、ログインもワンタッチです。
トラックポイント
キーボード中央には、ThinkPadのアイコンでもある赤色のトラックポイントを搭載。
指でわずかに押さえるだけで、マウスを自在に操れます。トラックポイントのおかげで、文字入力をしながらマウス操作をしても、ホームポジションからほとんど手を動かさなくて済みます。
多少の慣れは必要ですが、一度慣れるとタッチパッドの往復が非常にめんどうに感じるほど便利です。
ただ、今までは親指部分のクリックボタンが物理的なボタンでしたが、Gen 7からは感圧式クリックパッド(下記)に変更されたため、いままでとだいぶ感覚が変わりました。
ボタン部分を押さえても「コツッ」としたフィードバックはあるものの、物理的にはまったくへこまないため、押さえているのか押さえていないのか、いまいちつかみづらい感じでした。
特に中央のスクロールボタンは押しっぱなしで操作しなければならないため、指がずれてスクロールが止まってしまうことがありました。少々慣れが必要です。
大きく変更された感圧式クリックパッドは良し悪しが混在
トラックポイントは慣れを要しますので、通常のタッチパッドも装備しています。
複数指でのスクロールなど、ジェスチャー操作にも対応しています。
パネルサイズはGen 6よりも大きくなり、カーソルを大きく動かすときにも操作しやすくなりました。
Gen 7からパネル上部のクリックボタンがない、全面フラットな感圧式クリックパッドに変更されました。いままで物理的なボタンのタイプを使ってきた筆者には、ちょっと慣れが必要な感覚でした。
上記のトラックポイントの解説でも書きましたが、押してもパネルは動かず(押し下がらない)、機械的な「コツッ」とした反応(フィードバック)が返ってきます。
コツッという感触はほどよく、またパネルのどの部分でも同じ力でクリックできるというメリットがあります。
フィードバックは、コントロールパネルで0~100%まで25%刻みで変えることができます。100%にするとよりしっかりした感触になりますが、比例して音も大きくなるのが困りどころ。
昔の1プレートタイプのThinkPadを使ったことがある人はおわかりでしょうが、押すと「ボコッ」というか「ゴトッ」というか、パネルが響くような音が出たと思います。フィードバックを強くすると、あの音とそっくりの音が出てしまいます。
Gen 6までのボタンは静かで連続クリックしても全く気になりませんが、Gen 7のフィードバックを強くすると、「ゴトッ、ゴトゴトッ」とけっこう気になるクリック音です。
また、トラックポイントを使う場合はやっぱり物理ボタンがほしいと感じます。
タッチパッドだけを操作するなら、指の感覚はタッチパッドだけに集中しているからよいものの、トラックポイントは人差し指はトラックポイントへ、親指はボタンへと機能が分散します。
親指を平らなパネルの左クリック部分やスクロール部分に、見ずに(ノールックで)置くことがむずかしいのです。
慣れるまで何度も手元を見てしまい、まるでタッチタイピングの初心者状態です。せめてボタン部分に区切り線を入れるとか段差を設けるなどして、感触で分かるようにしてほしい。
また選択肢が感圧式クリックパッドのみで、物理ボタンタイプがほしくても選択できません。有料オプションでもよいので、ぜひ選択肢を設けてほしいところ。(オプションは2024年12月現在の状態)
ちなみに、この感圧式クリックパッドはThinkPad Z16から初採用されました。
Z16では初期型のためか、フィードバックがとても弱く、また「コツッ」ではなく「ビビッ」というスマホのバイブレーションのような感触で、非常に違和感がありました。
筆者はZ16も保持していますが、そのタッチパッドと比較するとP1 Gen 7はかなりの進化を感じました。ですが、今度は音の問題が発生し、またトラックポイントとの相性の悪さも残ります。
もう一段階、「ThinkPadらしい」進化がほしいと感じます。
また個人的には、オプションで常に物理ボタンタイプも選択させてほしいと希望します。
サウンド
スピーカーはボディ底面に近い部分にあります。
Gen 6はキーボード左右に大きなグリルが開いていましたが、汚れが入ってしまう心配がありました。Gen 7ではその部分がなくなったので安心です。
スピーカーは2基です。
音質はよく、スピーカーは底面ですがかなりクリアに聞こえます。低音もそれなりによく出ており、映像や音楽も楽しめます。Delby Atmosにも対応し、立体的なサウンドも表現できます。
音楽や映像編集をする人も使う機種なので、音は非常に重要です。できれば4~6スピーカーの高音質オプションもほしいところ。
大きく重いACアダプタ
最大GeForce RTX 4090まで搭載できることもあり、ACアダプタは230Wの高出力タイプ。
一般的なノートPC用アダプタと比べるとかなり大きく、重さは実測707gもあり、常に持ち運ぶにはきびしい重さ。
Type-Cポートからの充電にも対応しているので、100Wクラスの高出力USBアダプタなら充電が可能。Ankerの120W高出力アダプタ(ライチュウバージョン!)で充電できることを確認しました。
ただ、USBで接続すると「低速充電」との表示が現れ、CPUとGeForceが全力で動くには電力不足であると警告されます。あくまで出先で「補充できる」機能だと考えた方がよさそうです。
100W出力であれば、軽い作業をしながらでも少しずつ充電が進みました。日中のバッテリー延長には使えます。
新メモリCAMM2の採用
拡張もしやすいThinkPad P1ですが、Gen 7はメモリの規格に注意が必要です。
いままでのSO-DIMMではなく、「CAMM2」という新規格になります。SO-DIMMとまったく形が変わり、底面にコネクタがあり、ネジ留めで設置します。
コネクタからCPUへの経路が短縮されるため、転送速度の上限がアップし、またスロットコネクタを使うSO-DIMMより薄く設置できるため、本体の厚さを減らすこともできます。ノートPCにはメリットの多い新規格です。
ただ、スロットというか設置場所も1つだけのため、「増設」ができません。メモリを増やしたいときは大容量メモリへの「取りかえ」になってしまいます。
また現状では生産数の多いSO-DIMMよりもかなり値段が高く、同容量で2倍以上の価格となることも。購入時に搭載するメモリ量はしっかり考える必要がありそうです。
静粛性
ファンは非常に静かです。
軽い作業であれば、耳を近づけてもファンが回っているのか止まっているのか、わからないほどの静粛性。
フルパワーを使うベンチマークテスト中はファンの音が聞こえてきますが、最高潮でもうるさいと思うほどの音量までは上がりませんでした。(※レビュー機のスペックにおいて。筆者感想。)
Gen 4から更新された高効率ファンは、かなり良い仕事をしていると感じます。
ベンチマーク
3DMark
ゲームベンチマークとして、ほぼ業界基準となっている3DMarkにてテストをしました。
ベンチマーク | スコア |
---|---|
Night Raid | 39811 |
Wild Life | 46201 |
Wild Life Extreme | 15186 |
Fire Strike | 19114 |
Fire Strike Extreme | 9254 |
Fire Strike Ultra | 4528 |
Time Spy | 7923 |
Time Spy Extreme | 3559 |
Solar Bay | 33918 |
Port Royal | 4606 |
Speed Way | 1909 |
NVIDIA RTX 1000 Adaは、およそGeForce RTX 4060程度の実力となります。
性能はまさにミドルクラスといったところで、オブジェクトが多数が出てくる場面やレイトレーシングの場面では少しコマ落ちが起きますが、それ以外は総じてなめらかで、3DグラフィックワークやCADならスイスイ動くでしょう。
プロフェッショナルグラフィックワークでも、十分な性能を持っているといえます。
もちろんNVIDIAのグラフィックチップですから、話題の生成AIでも非常に高い性能を発揮します。ほとんどの生成AIはNVIDIAのチップに最適化されています。
PCMark 10
システム全体の性能を計測するテストです。
総合性能も十分に高く、デザイン作業、動画編集など重い作業にも余裕を持って対応できます。
最高スペックになれば、ジェネレーティブAI開発など多量の演算力を必要とする作業も可能でしょう。
テスト | スコア |
---|---|
総合 | 4602 |
Essentials | 8702 |
Productivity | 6312 |
WTS的まとめ
前世代と比べると、まずサイズダウンしていることがすばらしい。ひとまわり小さくなり、持った感じはかなりコンパクト。16インチマシンだということを忘れそうになります。
小型化しても性能はまったく落とすことはありません。最新のCore Ultra CPUと、NVIDIAグラフィックスを搭載していますから、オールマイティに高い性能を発揮します。仕事環境を丸ごと常に持ち運びたい!と考えている人に最適なモデルと言えるでしょう。
大型画面でもテンキーレスキーボードを採用する機種としても貴重です。やはりタイピングは体の中心で打ちたい!ThinkPad E16でも採用してくれればよいのですが・・・
ひっかかるのはかなり高額な価格と、新採用の感圧式クリックパッド。
価格はコストの問題も大きいでしょうからなんとか納得するとして、感圧式クリックパッドは、できれば普通のボタン式と選択ができるようにしてほしい。
とはいえ、全体としてみれば高機能でバランスの取れたモデル。持ち運ぶワークステーションとしては確実にオススメのできる一台です。
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