どうも太田アベル(@LandscapeSketch)です。
今日はSynologyのNAS DS918+にSSDキャッシュを追加します。
5万円以下のコンシューマ向けNASでは、ほとんどの場合、通常のディスクスロットしか搭載していません。つまり、SSDキャッシュを使おうとすると記録ディスクの本数を減らさなくてはならないのです。
4スロットのモデルなら2本減ってしまうとRAID 1ぐらいしか選択肢がなくなります。しかも1本で大容量のHDDを使用しないと、大容量も実現できません。これではNASとしての魅力が半減します。
しかし、DS918+はディスクスロットとは別にM.2 SSDスロットを搭載することで、ディスク4本をフルに搭載した上で、SSDキャッシュを利用することが可能です!
さっそく増設してみましょう。
まずバックアップ
最重要なのが、まずバックアップです。
当たり前ですが、HDDの交換やシステム(OS)更新、今回のような機材構成の変更などは、一つ間違えばデータが全消失する危険があります。
ワンタッチで更新できるOSでさえ、更新中に停電が起こったら無事に起動してくれるかどうかは運頼みです。
SynologyのNASはほとんどの機種がUSBポートを搭載しています。USB HDDをつなぎ、可能な限り全データを、できなければ最重要データのみでもバックアップを行いましょう。
自分の失敗であれ、停電などの偶発的な事故であれ、データは消えたら二度と帰ってきません。RAIDや暗号化のかかったディスクは、サルベージ会社でもほぼお手上げです。なにか起こったら、頼れるのはバックアップだけ。
ぜひ軽く考えず、改造前には必ずバックアップしましょう。
増設はカンタン
次にSSDを揃えましょう。
Synology DS918+(DS920+)は「NVMeタイプ」のSSDを利用します。ほとんど同じ形で機能が全く違う「SATAタイプ」が存在するので、購入する際には十分ご注意を。
「NVMe対応」「PCI-Express接続」などが仕様に入っているかどうかを確認してください。
今回はXPG SX7000 128GBを用意。ただ、これは処分品を安く買ってきたので、ほとんど残っているところはありません。現在アマゾンではシリコンパワー SP256GBP34A60M28が最安でした。(256GB / NVMe / 5年保証)
最近は256GBが一番小さな容量になりつつありますね。
大切なデータを保管するNASですので、新参メーカーの激安のものは信頼性の面から避けた方がいいでしょう。AData、Western Digital、Samsung、Silicon Power、PLEXTOR、Crucialなど、ある程度実績がある会社のものならどれでもかまわないと思います。
ちなみにスロットは2本ありますが、1本のみでも運用できます。ただし1本のみの場合は、キャッシュは「リードのみ」となります。コストが切迫していない限りは、2本での運用をおすすめします。
SSD本数 | キャッシュ |
1本 | リード(読み込み)のみ有効 |
2本 | リード/ライト(読み書き)両方に有効 |
なぜディスク 2本でないと読み書きキャッシュができないかというと、信頼性の問題だと思われます。
ディスク 1本では、もし故障した場合キャッシュ内でデータが壊れ、その壊れたデータがそのまま書き込まれてしまう可能性があります。リードのみなら、HDDの実データとキャッシュでハッシュなどを比較すれば正しいデータを送信できます。
ディスク2本ならキャッシュ同士で比較でき、データ破損を未然に防ぐことができます。故障時には書き込みキャッシュをやめればよいのです。正確な書き込み、保存という部分に重点が置かれていると思われます。
(公式に聞いたわけではないのであくまで想像になります)
次は増設です。
DS918+を裏返すと、下写真のようなM.2スロットへのフタがあります。
開けるとこのような構造になっています。
コネクタにナナメに挿すように入れ、その後真下に押し下げるとパチっとロックがかかります。
正常に設置できると平らになります。ナナメに浮いている場合はおかしいです。
そのあとフタを閉じれば完成。非常にカンタンです。
SSDキャッシュの有効化
次にSSDキャッシュの有効化です。SSDを取り付けただけではキャッシュは動いていません。
DSMのストレージマネージャを開き、左のペインから「SSDキャッシュ」という項目を選択。上に「作成」ボタンがあるのでクリック。
モードの選択です。
SSD 2本なので読み書きキャッシュが選択できます。迷わずこちらにしましょう。
キャッシュとして使用するSSDを選択します。
RAIDタイプを選択します。今回はRAID 1のみが選択可能です。
キャッシュに使用する容量を選択。通常は全容量にしたほうがわかりやすいでしょう。
割り当ては50~70%に抑えて設定しましょう。全容量の使用は長期間運用時に速度の低下を発生される場合があります。
SSDキャッシュ構成時はSSDの内容がすべて消去されます。その確認が表示されます。
キャッシュが完成すると、SSDキャッシュの項目にマウントされます。
運用してみる
さて運用してみますと、特にいままでと変わったことなくアクセスできます。
ただ、大量の写真を開く場合や、1つのファイルに連続的に複数人がアクセスする場合など、開くのがかなり速くなります。
細かなファイル作業に非常に高い効果が期待できます。
キャッシュの効果は、このようなヒット率として見ることができます。
ちなみに右下の「リール時間」はたぶん「Real Time(リアルタイム)」の誤訳だと思われます。最初なんだかと思いました。(笑)
キャッシュは使われれば蓄積され、使用量がどんどん増えていきます。使用量は増える一方で、容量Maxまで行くと使用頻度が低いキャッシュが削除され、入れ替えられていきます。
LANとしては1000MB/sまでしか使えないので、大量の転送や、大容量のコピーなどの速度はほとんどかわりません。
あくまで細かなアクセスの反応速度が上がる、という感じです。そのため家庭用として使っている1対1の接続では、あまり利点はないかもしれません。
逆に、複数人で大量のファイルへアクセスが発生する写真スタジオ、プログラム開発、デザイン事務所などは利点を感じられるでしょう。
アクセス速度のベンチマークを取ってみました。
10GBのiSCSI領域を作成し、Windowsからマウントしてアクセスしてみます。
シーケンシャルでのアクセスは読み書きともほとんど変化がありません。これはLANの速度の限界でしょう。
ただ、4K Q32TIの値を見ると、大きく変化しているのがわかります。これは細かなファイルを多数のスレッドでアクセスする速度です。
このような使用法なら、かなり速度が改善されそうです。
WTS的まとめ
細かなファイルを大量にアクセスする、1つのファイルを複数人で何人も読む、そんなときにSSDキャッシュはかなり効果を発揮します。
Synology DS918+はディスクのスロットを使用しないので、増設もお手軽。企業への導入なら積極的に使用したい機能です。
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