新型コロナウイルスの拡大により、業務形態も大きく変化しました。
なかでも最も変化したのは「会議(ミーティング)」でしょう。
車や電車、ときには飛行機まで使って集まり、狭い部屋にスシ詰めになり大声で話し合っていた会議はもはや過去のこと。クラウドミーティングが一般化し、その便利さ、健康への安全性が非常に優れていることは、誰もが実感しているはずです。
リモートになれてきた職場では、ローカルとリモートで複数人がプレゼンを行うような「ハイブリッドミーティング」も行われるようになってきました。
活用頻度が上がってくると気になってくるのが、
- 他社に流れるクラウドデータの安全性やサービス料金
- 複数人で接続したときのハウリングやノイズなど物理的な問題
- 録画がうまくいかない
などデータ活用の部分です。
そんなミーティングの困りごとを全て解決しようとするのが、QNAP(キューナップ)から新発売となる「KoiBox-100W(コイボックス)」です。
- 情報経路がクリアである(ミーティングデータは別会社を経由しない)
- 使いかたが簡単である
- PC、スマホ、タブレットなどマルチなデバイスから接続できる
- ホスト側はKoiBoxだけでよい(技術者の確保が不要)
- KoiBox経由で映像を送れるので、ケーブルを引っぱりまわす必要がない
- 既存のテレビ会議システムや、Zoom、Teamsなどにも接続できる
- 何人つないでもコストが変わらない
さまざまな利点を備えた、使いやすいビジネス用オールインワン・ミーティングシステムなのです。
今回KoiBox-100Wのテスト機をQNAPより提供いただきましたので、使い勝手や性能などを実際に体験レビューしてみたいと思います!
KoiBoxの機能紹介
まずKoiBoxとは何をする機材なのか?という部分です。
KoiBox-100Wの公式ページには「会議室向けの高画質ビデオ会議&4Kワイヤレスプレゼンテーションソリューション」と書かれています。
なんだか分かるような分からないようなキャッチコピーです。複数の機能をひと言で表そうとすると、こうなってしまうのでしょう。
ということで、ユーザー目線から何ができるか整理します。
1. 多くの参加者によるクラウドミーティング
まずはZoomやTeamsの代わりとなるクラウドミーティング機能です。
KoiBoxがミーティングをホストし、端末からリモート接続してもらいます。すると映像や音声がお互いに届きます。
WindowsやMacでは「だれでもつなげるホスト」を実現するのはかなりむずかしいもの。サーバの準備、映像ソフトやリモート接続サービスの立ち上げ、安全にアクセスするVPNやP2Pソフトの実装、ID管理や認証方法・・・などなど、専門の技術者が必要になるレベルです。結局Zoomのようなクラウドミーティングサービスに頼ることになります。
ですが、KoiBox-100Wなら起動するだけ※1。誰でもすぐにクラウドミーティングの準備がでてきてしまいます。
端末には専用の「KoiMeeter」アプリを入れ、Zoomのような感覚で接続できます。KoiMeeterはiOS、Android、ブラウザ版が用意されています。(公式ダウンロードサイトはこちら)
データは他社のサーバーを経由することもなく※2、社内回線のみを使用して強固な暗号化をかけて通信されるので、「情報の機密性・透明性」を確保することができます。
※1 インターネットへの接続やmyQNAPcloudアカウントの登録など、初期設定は必要です。設定後は本体の電源ボタンを押すだけで準備できます。
※2 接続時にルーティングのためにQNAP社のmyQNAPcloudへ接続されますが、端末が認識された後はQNAPへの通信は行われません。経由プロバイダ等が存在する場合はデータはホップしますが、その場合でもパケットは暗号化されているので復号は容易ではなく、安全性は非常に高いといえます。
2. ピアツーピアのプライベートミーティング
1 vs 1(もしくは1拠点 vs 1拠点)のミーティングを行います。
KoiBox同士をつなぎ、そこにつながれた全員とミーティングできます。もちろん通信データには強固な暗号化がかけられので、トップ同士による高レベル機密の会話も可能。
既存のテレビ会議システム(ウェブ会議ではない)にも接続できるため、現在の資産を活かしつつ、モバイル機器までサポートを広げることができます。
また、どちらのKoiBoxに参加している端末(PC、スマートフォン)でも、お互いに表示されます。バラバラのデバイスから接続されても、全員参加状態のミーティングが可能となります。
3. ローカル(リアル)ミーティング
全員がリアルで集まるミーティングでも利用できます。
え?リアルで集まるのにKoiBoxがなにするの?と疑問に思えますが、「プレゼンテーション機能」が非常に役立つのです。
通常、ディスプレイにプレゼン資料を映すとなると、PCから物理ケーブルでディスプレイやプロジェクターにつなぎます。
ですが、暗い中でケーブルの接続に手間取ったり、パソコンごとに画面解像度がガタガタ変わったり、さらにはまったく映らなかったりと、場をシラケさせるトラブルがよく起こります。
KoiBoxを使えば、PCやスマートフォンなどからWi-Fi経由で画面をすぐに映し出すことができるのです。映すためのウィンドウを指定(固定)することもできますので、周りの余分な画面が映り込んでしまうこともありません。
複数人で交代しながらの説明でも、座ったまま接続先を切り替えるだけ。非常にスマートです。
映像はなんと4Kまで対応しています。
デザイン部門や映像部門で、細部を詰める作業にも使えそうですね。
4. 全てを録画できる
KoiBoxにHDDなどのストレージを組み込むことで、ミーティングを丸ごと「録画」できてしまいます。
リモートミーティングはもちろん、ローカルでのプレゼンも含めて録画可能。見ている映像・音声がそのまま保存されます。
ローカルのプレゼンでも、カメラやマイクを接続すれば、参加者の発言や表情も録画できます。プレゼン後に映像をお互いに持っておけば、質問忘れや認識の齟齬(そご)も防げるでしょう。
KoiBoxはクラウド型からローカルまで、あらゆるミーティングに活用できるのです。
機材をチェック
ようやっと実際の機材を見てみます。
大きさはB5ほどの面積(232 x 152 x 45 mm)、重さは約1.09 kg(ともに公式サイトでの公称値)。小さいので部屋を移動させるときにも、ラクラク持っていけます。
こちらがKoiBox本体です。全体ブラックのプラスチック製。
カラーは現在ブラックのみとなっています。
デザイン事務所などに向けて、コーラルピンクやベイビーブルーといったカラーバリエーションがあってもいいかもしれません。(QNAPのNASには、すでにベイビーブルーのバリエーションがあります)
天面は2段階の高さに分かれていて、左に放熱部分、少し盛り上がるように右のコネクター部分になっています。
よく見るとパソコン用CPU「Intel Celeron」のロゴシールが。
つまりKoiBoxは単純機能のミーティングシステムに見えますが、実際はパソコンクラスのマルチメディア能力を内蔵した高機能なマシンなのです。
これから先のアップデートも期待できそうです!
背面にはコネクタ部分。
有線LAN(1Gbps)、USB 3.2 Gen 1(= USB 3.0、USB 3.1)ポートが4つ、電源ポート、HDMIポートがあります。ケンジントンロックもありますから、会議室に置きっぱなしにする場合も安心です。
またWi-Fiも内蔵しています。無線LANにも追加装備なしで参加可能です。ただしWi-Fiが遅い場合、通信ラグや映像の劣化が発生する可能性があります。
前面は電源スイッチとランプのみ。
片手サイズのリモコンも付属します。単4乾電池2本で動作します。
大きさはAmazon Fire TVのリモコンに非常に近いです。Fire TVをお持ちのかたはそれを想像していただければOK。
他に必要な機材
KoiBoxでミーティングを行うためには、別途カメラとスピーカーを用意する必要があります。
公式ページでは推奨品の型番がいくつか提示されていますが、USBで接続するカメラやスピーカーなら、ほとんど認識できるそうです。
まずは手持ちの機材を接続してみて、使えないようだったら推奨品を購入するのがいいでしょう。
当方が持っていたマイク内蔵ウェブカメラ「eMeet NOVA」(FULL HD USBカメラ+スピーカー)を接続してみたところ、なにごともなく認識されました。音声の乱れや遅れも特に感じませんでした。
QNAP推奨品ではありませんが、いちおう紹介しておきます。
多人数でのミーティングの場合、上記NOVAでは少々画角が小さく、遠い音声は聞きづらいです。C980 Proの方が映像、音声ともに段違いにきれいです。ただしこちらも推奨品ではありませんので、ご参考まで。
使い勝手はどうなのか?
安心なのはいいですが、使いにくかったら意味がありません。
Zoomも「アプリを入れて、URLとパスワードだけ打てばいい」というカンタンな仕組みがあるからこそ、ここまで広がったのです。つまり「高齢のITを毛嫌いする重役でも使いやすい」必要があります。(笑)
KoiBoxはどうでしょうか?
今回はスマートフォン(iPhone)から接続してみます。
KoiBoxを待機状態にし、iOSのアプリストアから「KoiMeeter」をインストール。
初回だけ手間がかかりますが、QNAPのmyQNAPcloudへの登録が必要です。またKoiBox側もアカウントに参加させておきます。
続いてスマホのKoiMeeterからダイヤルパッドを出し、電話のようにKoiBoxの「KoiCode」を入力します。(KoiCodeはKoiBoxのメイン画面に表示されています)
通話ボタンを押せば、電話のような呼び出し音がなります。
数秒おいてKoiBox側で着信音が鳴りますので、OKを押せばつながります。(自動着信機能もあります)
まさにZoomやTeamsのような感覚で、非常にカンタン!!
遅延やノイズは?
直線4kmほど離れた拠点でKoiBoxのミーティングをしてみました。
光回線は1Gbpsです。
映像、音声ともにクリアで、商用クラウドミーティングサービスとなにも変わりなく感じます。
いや、どちらかといえばKoiBoxの方が映像がきれいに見えます。
映像のブロックノイズが少なく、音声もざらつくことがほとんどありません。全世界から多人数がつなぐZoomと違い、KoiBoxは自分たちだけの通信となるので、機器に余裕があるのでしょうか。
30分ほど話してみましたが、止まってしまったり、映像が極端に劣化したりといった、クラウドミーティングでありがちな症状はまったくありませんでした。
もちろん回線状況にも左右されますが、通信さえ安定すれば他のサービスよりも安定した映像を受け取ることができそうです。
WTS的まとめ
まずはKoiBoxの概要と、ミーティングの使い方を紹介しました。
こういう機材では「だれでもすぐに使えるのか?」「カンタンなのか?」「映像品質はどうなのか?」という部分が気になると思います。レビューした通り、使い勝手については合格点だと感じます。
自社専用のテレビ会議システム(ウェブ会議ではなく)を導入すると考えれば、とんでもなく低コストでカンタンです。テレビ会議システムは専門技術者、専門機器が必要になりますからね。
KoiBoxは回線の敷設も専門技術も必要ありません。既存のLAN回線の設定ができればOK!この差は非常に大きいでしょう。
今後もいろいろな使い方、機能を紹介していきます!
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