過去数回にわたって、NECのスリムデスクトップPC「LAVIE Direct DT」のパワーアップテストを書いてきました。
LAVIE Direct DTはその構造上、カードの長さに非常に厳しい制限があります。
本体前後長が他社スリムデスクトップPCよりも短く、さらに鋼鉄のドライブシャーシがPCIe部分まで覆っているため、ムリに入れることすら不可能なのです。
プラスチックやワイヤー類なら、入れるときだけムリに曲げて「よっこいせ」で入れたり、最終手段としては「切る」とか「けずる」とか、見た目を問わなければ方法はあります。
が、鉄の加工はさすがに素人では無理。切るはもちろん、ピンポイントで曲げるなんてことも不可能です。
過去にはGTX 1050 Tiを入れようとしましたが、こんなふうにドライブシャーシに引っかかって閉じることすら不可能に!少しでも当たったらアウトなのです。
そんな試行錯誤をくり返し、先日150mmの短さですんなりと入るカード「MSI GeForce GT 1030 2GD4」を発見し、無事に取り付けることができました。
ローグレードのGeForce GT 1030なのでそれほどのパワーアップは望めなかったものの、CPUよりは少しパフォーマンスがアップし、軽い3D CADぐらいなら助けになるかな、という結果でした。ディスプレイ数が増やせるのもポイントですね。
そんなこんなで、「Lavie DTには150mm以下のカード」が自分の中の結論となっていました。
テスト機スペック
第10世代CPUCore i7-10700を搭載したモデル(2020年秋冬モデル)での実験になります。
記事執筆時点での最新型は第12世代CPUを搭載したものですが、どの世代も内部設計はほとんど変わっておらず、カードの制限はほぼ同じだと思われます。
項目 | スペック |
---|---|
OS | Microsoft Windows 11 Home (x64) |
CPU | Core i7-10700 |
CPUコア/スレッド数 | 8コア / 16スレッド |
内蔵グラフィック | Intel UHD 630 |
メモリ | 8 GB |
メモリスロット (空きスロット) | 4 (2) |
ストレージ 1 | 1TB HDD |
光学ドライブ | DVD+R DL |
ポート類 | USB Type-C x1、USB 3.1(Type-A)×2、USB 3.0×2、USB 2.0×4、DisplayPort×2 、ミニD-sub15ピン×1 |
サイズ | 89(W)×298(D)×336(H)mm(スタンドなし) |
重量 | 約 4.7kg |
ワークステーション用カードなら入るのか・・・!?
あれからまた時間がたちまして、「GT 1030ではやっぱりCPUとは大差がないな」と感じていました。
GT 1030のCUDAコアは384 基、グラフィックメモリも2GBと必要最低限です。それ以外にもさまざまな機能が制限されており、目立つものでは「NVENC」。いわゆる動画エンコード用のエンジンが搭載されていないのです。
LAVIE Direct DTで軽い動画編集を・・・と考える人もいると思いますが、GT 1030では全くと言っていいほど支援にはならないのです。
もう少し上のカードで入るものはないか・・・と探し続けたところ、GeForceやRadeonのようなゲーミング用ではなく、ワークステーション用のカードならどうか?と思い当たりました。
(入るかわからないけど)NVIDIA T600をいきなり買ってみた!
グラフィックカードにはゲーム目的のものと、CADや映像編集などのプロ用途を想定したものが存在します。(他にはAI専用カードなんてものも存在します。)
NVIDIAでは、Quadroシリーズ、Quadro RTXシリーズ、Tシリーズ、RTX Aシリーズなどがそれです。(名前がコロコロ変わるので非常にわかりづらい)
AMDはRadeon Proシリーズ、FireProシリーズがあたります。
スペックを調査したところ、NVIDIA T400、T600、T1000が長さ6.6インチ(およそ156mm)のカード長となっており、ギリッギリ入るかもという気分(?)になってきました!
ただ、前回の記事で確認した通り、計測では153mmぐらいが限界と見えます。数ミリの差で入るかどうかの明暗が分かれるのです!これは怖い!
しかも、ワークステーションカードは普通に高額。
T400はCUDAコア384基、4GBメモリで30,000円ほど。このスペックは現状搭載しているGT 1030と大差がありません。なのに価格は約2.5倍!
T600はCUDAコア640基、4GBメモリで35,000円ほど。T400と比較してコア数はおよそ倍になります。パワーアップを確認するならこちらの方がよさそう。が、なかなか重い価格。
T1000はCUDAコア896基、4GBメモリで48,000円ほど。もちろんこれがベストとなりますが、いかんせん高すぎる。個人が手軽に買える金額ではありません。
入るかどうかもわからないカードにどれほどつぎ込むか・・・としばらく悩みましたが、ここは記事のためネタのため!自爆覚悟でNVIDIA T600を買ってみることにしました!
ようやく本題。カード到着
相変わらず前置きが長くてすみません。
小遣いを使い果たして購入したNVIDIA T600がやってきました!
長さは・・・約156mm。これが6.6インチサイズなのでしょう。
想定限界の153mmより3mmもオーバーです。
前回正常に取り付けできたGT 1030カードと比較すると、ファンカバーがおよそ4mmほど長い。
こ、これはヤバいか・・・。
LAVIE Direct DTに取り付け!
とにかく取り付けてみる!
まずはカードを合わせてみると、本気でギリギリだ!
軽く差し込んでみると、後ろのケースが少しスレている感触だ!ちょっと抵抗感がある。
そのまま入れていこうとすると、ケースの後ろ側がつっかえて、カードがナナメになってしまう。ぐぐぐ・・・いやな予感が・・・。
カードに傷が付くのはいやなので、ドライブシャーシを上げて入れてみると、もちろん入る。そこからゆっくり閉めていくと・・・カチャッ(ロック音)
あれ?普通に閉じた!?なんで!?
GTX 1050 Tiのときのように衝突して終わるかと思いきや、抵抗なく閉まったのだ!
横から見たところ、カードの後ろ側は微妙なカーブがかかっており、なんと、ちょうどそのカーブの短い部分にドライブシャーシの出ている部分が重なったのだ!上から見るとほぼ接触しているが、横から見ると1mm程度のスキマを残し、当たってない!!
うおおおおおお!当たってないぞ!!!
正常に搭載できたーーーーーー!(ガッツポーズ)
一応の注意書きです。
次回ベンチマークをお届けします!
ということで超ギリギリでしたが、接触せずに搭載することができました!
少しでも接触していると端子に負荷がかかったり、カードがゆがんだりなど、長く使う上で問題が出てきます。
まずは正常に搭載できてよかった!!
次回はベンチマークを行い、どれほどのパワーアップになるのかお伝えします!
ご自身で搭載してみたい方へ。どのメーカーのT600をい購入すれば良いのか?
NVIDIAのワークステーションシリーズには、GeForceのような”オリジナルファンモデル”というものが存在しません。
これは、全世界でまったく同じサイズ、同じ性能、同じ耐久性のものを販売したいというNVIDIAの戦略です。
ワークステーションPCは本体が特殊な設計になっているものが多く、メーカーごとに形が違うGeForceの場合、「グラフィックカードが壊れたので急いで取り寄せたら、大きくて取り付けできない!」という事態が起こりえます。
止まってはならない場所で使われるワークステーションシリーズは、どこで買っても(違う国で買っても)同じものが入手できるよう、統一されているのです。
Amazonなどで販売されているものを見るとわかりますが、カードサイズからファンの形から、どのメーカーのものでも同じです。基本的にどこからNVIDIA T600を購入しても、筆者とまったく同じものが届くはずです。
ただ、LAVIE Direct DTの設計は変化しますので、発売時期やグレードによっては搭載できない可能性があります。それほどギリギリです。この点だけご了承ください。
WTS的まとめ
LAVIE Direct DTにはGeForce GT 1030が限界かと思われましたが、意外なところに搭載できるカードがありました!
お金に余裕ができたら(笑)、NVIDIA T1000、A2000も試してみたいと思います。でもA2000は形状としてかなり無理だな。
次回はベンチマークをとってみます!けっこういい感じですよ!
コメント
記事を大変興味深く拝見させて頂いてます。
こちらではNVIDIA T600の半値程で購入可能のRD-RX6400-E4GB/LPを試してみました。
これはメーカーHPでは長さ152mmとありますが、153mmのLavie DTの内部空間ではわずかに干渉して入りませんでした。
おそらくブラケット抜きの基盤長さが152mmであって、ブラケット分を入れると154mmほどになっていると思われます。
結局、金のこでHDDドライブシャーシを切削する羽目になりましたが、今のところ問題なく動いてます(笑)
以上。人柱報告です。
やひとさん > コメントありがとうございます!
なかなかハードな改造で取り付けされていますね。(笑)
最近のグラフィックカードはどんどん大型化していますので、 Direct DTも次のバージョンはもう少し空間を空けてほしいところです。