どうも、太田アベル(@LandscapeSketch)です。
「写真管理(アルバム)」ジャンルのソフトは、無料/有料含めて、選択に困るほど数が出ています。ですが、「プロ写真家のRAW現像作品に耐えうる」という条件を加えると、片手で足りるほどしかありません。
その1本であるSILKYPIX(シルキーピクス)は、きびしいプロ現場の中でじっくりと育ってきた歴史あるソフトとして、愛用者が多い1本。
最新バージョンは10となり、安定性、軽快製、納得感のある色出しでプロの現場で活躍します。
今日はSILKYPIX最上位版である「SILKYPIX Developer Studio Pro 10(以下 SILKYPIX)」をレビューしていこうと思います!
- プロの現場でもまれた安定性
- 他のRAW現像ソフトに比べ軽快
- オート現像でも自然な仕上がり
- 多重露光合成などプロのピンチを救う機能
ユーザーインターフェイス
まずはメインとなるユーザーインターフェイスを見ていきます。今回は同じくプロ用現像ソフトとして有名なAdobe Lightroom(以下Lightroom)と比較していきます。
Lightroomと比較すると、全体的に似たようなレイアウトとなります。写真を多数表示する「サムネイル表示」、1枚のみの「プレビュー表示」、ストリップが下部に表示される「コンビネーション表示」が選択可能。
左右のペインには写真の詳細情報、カラーヒストグラム表示などが並びます。Lightroomからの乗り換えでも戸惑いは少ないでしょう。
操作を開始すると、Lightroomと比較し、軽快な動きにまず気づきます。
起動時間が少し短く、写真表示がパッパッと切り替わり、思考を妨げません。ボタンや情報表示も洗練されており、過不足なくコンパクトにまとまっています。
1点注意が必要なのが、高DPIディスプレイ(Hi-DPIディスプレイ)への対応。Lightroomでは解像度に応じて文字サイズなどが変化しますが、SILKYPIXでは自分で切り替える必要があります。
オプション > オプション機能 > スキンの選択
から行うことができます。
こちらのメニューから「大きいサイズ」「高解像度モニタ向け」を選択すれば、4KなどのHi-DPIディスプレイでも見やすい大きさに変更できます。変更後は再起動が必要でした。
「表示設定」メニューに含まれておらず、「表示サイズ」という名前でもないので機能が見つけにくいのが少し難点です。
写真管理
写真の管理方法はSILKYPIXとLightroomでかなりコンセプトが違います。
Lightroomでは「カタログ」にファイルを登録し、カタログ内でさまざまな作業をします。カタログと実体のファイルは完全に分離しています。
そのため、他のPCで開きたい場合、カタログを丸ごとコピーしなければ、編集情報がまったくありません。PC間で同期することもできません。(新しいLightroomではCreative Cloudを介した同期も可能ですが、反映が遅く、作業感にまだ問題があります)
また、実体ファイルを移動してもカタログ内には残っている、という齟齬(そご)が起こることがあり、「編集したのになぜかファイルが書き出せない!」というような現象も起こります。はじめてLightroom使う人からは、カタログの概念がむずかしい、とよく聞きます。
対してSILKYPIXでは、PC内のファイル構造と一致する「フォルダ管理型」。
フォルダ内に写真があればある、なければない、と実体ファイルと表示が一致しているのでわかりやすい。編集情報は”SILKYPIX_DS”というフォルダがそれぞれのフォルダごとに作られ、その中に入っています。
そのため、SILKYPIXの写真フォルダを共有し、別のPCで開いた場合でも、すぐに最新の変種情報が読み込まれます。
ただ、フォルダ構成が深い場合はツリーが長くなり、見づらいという点もあるでしょう。また、SILKYPIXを知らない人は設定ファイルが入った「SILKYPIX_DS」を誤って消してしまうことも考えられます。
それぞれ一長一短がありますが、はじめての人にはSILKYPIXの方が理解しやすいかもしれません。
豊富なセレクト方法
写真セレクトを使ってみましょう。
SILKYPIXでは豊富な条件付けで、必要な写真をすばやく選び取ることが可能です。また、不要な写真を選択し、一気に消去できます。使える条件はこちら。
- 現像予約
- コピー/移動予約
- 削除予約
- レーティング(なし ~ ★★★★★)
- ユーザーマーク(青、緑、赤、黄、紫)
- プロテクト(完全保護)
写真の出来でレーティングし、その中で入稿するものは赤、小さく使うものは黄など、自分なりのルールで柔軟にセレクトできます。
それぞれの条件で絞り込み表示をすれば、余分な写真が見えなくなり、スッキリと編集できます。
出力したい写真に「現像予約」を付けておけば、最終出力時に「現像予約コマのバッチ現像」で一気に書き出せます。いちいちマウスで選ばなくてもよいので、正確で便利です。
編集機能
続いて現像と調整機能をざっと見てみます。
「調整」モードに入ります。モードの切り替えも軽快です。
編集画面の構成が変わり、カラーヒストグラム、調整バーなどが並びます。ツールは長年の改良が受け継がれた使いやすいもの。露光、色合い、シャープネスなど、よく使うツールがメインに並びます。
パレットの並び、取り外しは自分好みに変更できます。
バージョン10では「自動調整」ボタンも強化され、ワンタッチで自動露出補正、オートホワイトバランス、自動レベル補正をまとめておこない、非常に自然かつ印象を強める表現を引き出します。
他のツールではそれぞれをいじっていきますが、SILKYPIXではまず自動調節を押し、気になる部分を微調整する流れになります。かなりの時間短縮を実現します。
シャープやノイズリダクションも充実。自然なエッジ感でシャープをかけられ、シャープ感を維持しながらしっかりノイズ除去を行えます。
とくにシャープは新機能「ファインディティール」モードがすごい。他のツールで細かなディテールの部分にシャープをかけると、エッジがハレーションのように白く浮くことがあります。ファインディティールは、細かな部分を自然に引き締め、解像感を上げてくれます。
新世代の”飛び道具”も搭載
バージョン10では、通常の編集に加え、複数の写真を使った合成テクニックを搭載。
まずは複数枚の写真を合成し、擬似的にISO感度を上げる「多重露光合成」。同じ構図で感度を変えて撮影しておけば、それらを合成して、感度が高い写真を生成します。
ノイズが多くなりがちな夜景でも活躍。手持ちでも、まるで三脚で長時間露光したかのような、低ノイズな写真を作り上げることができます。
ほかにも、
複数の花火の写真を1つに合成し、盛大な花火に見せる「比較明合成」。
被写界深度が浅いマクロレンズで撮影した画像などと合成し、全面にピントが合った写真にしてしまう「被写界深度合成」。
交差点などを定点撮影し、その中から動くものだけを除去してしまう「動体除去合成」。
逆に動きのあるものだけを残し、超連写のような写真を作る「ストロボモーション合成」。
これらを使い、まるで魔法のような合成写真を作ることができます。
インスタグラムでは、もはや”普通”の写真で「いいね!」をもらうことはむずかしくなっています。飛び道具としてこれらの合成機能を使えば、カメラの限界を超えた感動的な写真で、高評価を得られるかも知れません。
フィニッシュも快適に
編集後にめんどうなのが提出です。
ピクセル数を合わせ、ファイルを時間順に並べ、ファイル名を指定の連番に変え、フォルダに書き出し・・・と、かなりの手順があります。さらに提出後に枚数やファイル名の変更を依頼されたらまた同じことをしなければならず、雑用ばかりになってしまいます。
SILKYPIXは最後までぬかりありません。
書き出し設定は、サイズやファイル形式はもちろん、ファイル名に連番や日付などを付け加えるのもお手のものです。しかも、プリセットとして保存できるので、提出先のスタジオごとに設定しておけば、ワンタッチで間違いなく書き出せます。
これでデザイナーから「ファイル名がおかしいんですけど!?」と毎度文句を言われることもなくなるでしょう。(笑)
このあたりも、プロに愛用される理由でしょう。
1本で3台のPCにインストールできる
SILKYPIXは機能ごとに3つのグレードに分かれています。また、すべて「買い切り」となっているため、1つのバージョンを長く使いたい人、毎月支払のサブスクリプションに抵抗がある人も、安心して購入できます。
すべてを備えたプロフェッショナル版
SILKYPIX Developer Studio Pro 10
RAW現像をさらに高度化したい中級者向け
SILKYPIX Developer Studio 10
JPEG写真のみを扱う入門者向け
SILKYPIX JPEG Photography 10
SILKYPIXは1本の購入で、自分の持つ3台までのパソコン(Windows、Mac問わず)にインストールできるのもポイントです。
一昔前ならいざ知らず、最近はデスクトップ、ノート、タブレットPCと、一人で何台も使い分ける時代です。そのそれぞれにライセンスが必要とあっては、非常にコストが重くなります。
しかしSILKYPIXなら、たとえばiMac + MacBook Pro + Windowsタブレットという組み合わせでも、たった1本でやりくりできてしまいます。(Adobe Creative Cloudはサブスクリプション形式で、Mac/PCは2台までの制限あり)
コスト面からも、他のソフトと比べたいところです。
現像が楽しみになるソフト
まだまだ紹介しきれないほど、多数の機能を搭載しています。
SILKYPIXはたんなるRAW現像を行うソフトではなく、より撮りたかった画に近づけるための万能ツールです。多数の機能を使いこなせば、現像がスピードアップし、より理想の写真をすばやく手に入れることができるはずです。
30日間もの長い無料体験も可能ですので、他社ツールを使っていたら、ぜひ無料体験をして比較してみたいところです。
WTS的まとめ
プロに必要なあらゆる機能が1つにまとまり、かつ軽快に動くという、まさに現場主義といえるRAW現像ソフトです。
今回の短い記事ではSILKYPIXのもつ機能の、ほんの一部分も紹介できません。これから継続して、詳しい機能のレビューなどを書いていきたいと思います。
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