薄く、軽く、それでいながらカーボンを使った驚異的な頑丈(がんじょう)さも備える、まさにビジネスノートパソコンのベンチマークとも言える存在、それがLenovoの「ThinkPad X1 Carbon」です。
Gen 10では、第12世代インテルCPUを搭載し、より高速で長時間のバッテリー駆動を実現しています。
さっそく実機をレビューしていきましょう!
- 第12世代CPUを搭載し、高速でより長時間のバッテリー駆動
- 高機能はそのままにわずかに軽く
- 4Kも選択可能に
- Core i7でも静音性が高い
デザイン
デザインはほぼ従来を踏襲。大きさ、厚さ、くさび形の形など、キープコンセプト。ロゴの位置などわずかな変更にとどまっています。
ThinkPad X1 Carbonはすでに熟成の域に入っていて、何かしら技術的なブレイクスルーがなければ、大きく変更する必要はありません。「そのまま」を望んでいるユーザーも多いのです。
従来からの使い勝手は非常に満足できるもので、CPUが速くなる(新世代になる)だけで十分だと思っています。キー配列や本体の色をコロコロ変えることを望んでいません。”変わらないこと”が正常進化なのです。
重量は毎日持ち運んでも苦にならない1.12kgから。(選んだ構成により変動します。)
公称値は1.12kgからですが、レビューのモデルは下記写真の通り1.11kgでわずかに軽かったです。
本体裏側。通気口はごく小さな穴が一箇所(写真上部)。レビューモデルのCore i5なら、これで十分そうな感じでした。
ディスプレイ
ディスプレイは14インチ、比率は16:10。過去モデルの16:9のディスプレイより縦方向に少し大きくなり、エクセルなどが1行分ほど多く表示できます。また、ブラウザなどでも従来より少し広く使えます。
14インチは13インチと比べけっこう広く感じるのに、ノートとしては大きすぎない、絶妙な大きさ。
ディスプレイは非光沢タイプ。周りの光が映り込みにくく、細かな描画もしっかりと見えます。また光沢タイプよりも目が疲れにくいとされていて、長時間の使用でも集中力が続きそうです。
色合いはあざやかで、IPS液晶なのでどの角度から見てもほぼ色化けや白っぽくなることもなく、鮮明です。かなりの急角度からのぞいても、色がほとんど変化しません。
Lenovo直販サイトでは、解像度や機能で数多くの選択肢があります。
解像度 | 種類 | 光沢/非光沢 | カラー | タッチ |
---|---|---|---|---|
WUXGA (1920×1200) | IPS | 非光沢 | 100% sRGB | なし |
WUXGA (1920×1200)IPS | 非光沢 | 100% sRGB | あり | |
WUXGA (1920×1200) プライバシーガード | IPS | 非光沢 | 100% sRGB | あり |
2.2K (2240×1400) | IPS | 非光沢 | 100% sRGB | なし |
2.8K (2880×1800) | OLED | 光沢 | 100% DCI-P3 | なし |
WQUXGA (3840×2400) | IPS | 光沢 | 100% DCI-P3, HDR400 | なし |
WQUXGA (3840×2400) | IPS | 100% DCI-P3, HDR400 | あり |
ディスプレイの中でもっともバランスが良いのは、ベースグレードとなるWUXGA (1920×1200)。これでも十分になめらかな文字で、バッテリーもそれほど多くは消費しません。
さらになめらかさにこだわりたい場合は、2.2K液晶がちょうど良い選択です。
先進的なOLED(有機EL)も選べますが、長時間同じ映像を表示させると焼き付きが起こる可能性もあり、取り扱いに気を使います。
最大となるWQUXGA (3840×2400)は写真編集のプロや映像作家などにおすすめ。DCI-P3にも対応しています。ただしバッテリーの消費が多くなります。持ち運びをメインに考えている人はバッテリースタミナが気になるかも。
ディスプレイは指一本でスッと開くことが可能。本体が持ち上がってこないので、開ける時もスマートな印象です。
ディスプレイは180度開くことができます。複数人で除くような使い方も可能。
キーボード
ThinkPadの注目点はキーボード。長年ビジネスで鍛えられた非常に打ちやすいキーボードです。
キーピッチはおよそ19mm。デスクトップマシンのキーボードに近い余裕があり、手が大きめの人でも無理のない指運びが可能です。
テンキーがないのでディスプレイに対してキーボードが体の真正面、ディスプレイのほぼ中心に来るのも良いところです。
キーの並びは標準的ですが、Enterキーの周りなど、少し細長くなっているキーがあります。ただ、それほど多用するキーではありませんので、筆者は全く気になりませんでした。
キーは下側が丸くなっている独特な形で、表面もわずかにへこんでいて指にフィットします。
Gen 10では、ストロークが浅くなった薄型キーを採用。
軽量化や薄型化には貢献しているものの、3年ほど前のThinkPadから移行すると、ストロークが浅くなってしまい打ちにくく感じるかもしれません。少し慣れる時間が必要です。
強靭さは今まで通り。ホコリや湿気の多い場所でも実働に耐え、さらには多少水をこぼしても平気です。(※どんな水分でも平気なわけではありません。)
カーソルキーは高さもあり、とても使いやすい。
他メーカーのノートではFnとのコンビネーションキーになっていることが多いPage Up / Downが、カーソルキーの上についているも独自の工夫です。ビジネスではかなり多用数キーなので、エクセルをよく使う人は手放せなくなるはず。
トラックポイント
ThinkPadのトレードマークでもある、キーボードの真ん中にある赤いトラックポイント。人差し指でわずかに力を入れると、その方向にカーソルが動きます。
タッチパッドしか使ったことない人は「いまいち使いづらい」と言うことが多いのですが、ThinkPadを長年使っている人の中には「トラックポイントのためにThinkPadを買っている」という人もいます。
トラックポイントの最大の利点はキーボードのホームポジションから手を動かさなくてもマウス操作ができること。使ってみるわかりますが、腕の動きが他のパソコンに比べて半分以下になります。
書類を作るときの操作を考えてみてください。
文字を打つ → 手をタッチパッドへ移動 → 文字を打つ → 手をタッチパッドへ移動・・・
という感じでけっこう手を動かしています。これでは手を動かすたびに思考が途切れ、集中力が途切れがちになります。
そこでトラックポイントです。
キーボードのホームポジションに手をおいたままで操作できるので、腕を一切動かさずにすべての操作が行えます。キーボードを主に使う人にとって、トラックポイントは非常に使えるデバイスなのです。
タッチパッドも装備
トラックポイントは慣れを要しますので、通常のタッチパッドも装備しています。右下/左下を押し込むとクリックができます。
タッチパッドは1プレートタイプ。左下/右下を押し込むことで左/右クリックが可能です。タッチパッドも同色で、統一感があります。
指のすべりはサラサラしていて操作しやすいです。
複数指でのスクロールなど、ジェスチャー操作も可能。
サウンド
裏返すと、手前側(写真下側)にスピーカー穴が見えます。サウンドはごく普通の音質で、通話やニュースなどを聞くのは問題ありませんが、音楽鑑賞としては物足りないぐらいです。
静粛性
事務的な内容の処理であれば、ほとんどファンも回転していないようで非常に静か。耳を近づけてもファンは回っているのか止まっているのかわからないほど。
フルパワーを使うベンチマークテスト中はファンの音が聞こえてきますが、最高潮でもうるさいと思うほどの音量までは上がりませんでした。
ベンチマーク
PCMark 10
システム全体の性能を計測するテストです。
テスト | スコア |
---|---|
総合 | 5030 |
Essentials | 9573 |
Productivity | 6806 |
Digital Content Creation | 5255 |
通常作業はもちろん全て快適です。Office、ブラウジングなどで引っかかることは全くありません。
最新CPUなので、クリエイティブ作業にも対応可能。とはいえ動画を編集する、3DCGをクリエイトするなど重い作業は、きびしいです。
3DMark
ゲームベンチマークとして、ほぼ業界基準となっている3DMarkにてテストをしました。軽量テストのみを行いました。
ベンチマーク | スコア |
---|---|
Night Raid | 13468 |
Fire Strike | 4130 |
軽量テストのNight Raidではかなりなめらかな表示でした。Fire Strikeでは重さを感じるものの、なめらかさを感じる状態でした。軽いゲームならプレイできるでしょう。
総じて、とてもCPUだけで動いているとは思えない性能です。モバイルノートとしては十分な水準だと思います。
ドラゴンクエスト X
オンラインゲームのドラゴンクエスト Xのベンチマーク。比較的軽量なゲームのベンチマークです。
設定 | スコア | 快適度 |
---|---|---|
フルHD / 最高品質 | 6688 | 快適 |
従来であればグラフィックボードがなければ動かないようなテストも、CPUだけで「快適」の評価でした。
CPU内蔵グラフィックスの進化を感じますね。
画質を調整すれば、FULL HDで十分プレイができる速度です。軽量ゲームなら困ることはなさそうです。
ポート類
USBはThunderbolt4兼用のType-Cポートが2つ、USB3.2 Gen1 Type-Aが1つあります。外部ディスプレイ出力はHDMIが1ポート。
有線LANポート、SDカードスロットはありません。有線LANは企業内で接続するときは必要とされることがまだありますし、クリエイティブ作業ではSDカードスロットを使う人が多いでしょう。この2つはできれば搭載してほしいところ。
高性能なマイク
本体上部に4つの小さな穴があります。これがマイクです。
リモートワークやビデオ通話で広範囲の声を非常にクリアに拾うことができます。言葉がはっきりと通じ、会議がスモーズになるはずです。
ウェブカメラ
ディスプレイ上部にシャッター付きのウェブカメラを備えます。Webカメラの解像度は1920×1080。比較的広角(広く映る)カメラです。一人で使うときは周りの風景も結構入ってしまうので、背景に気をつけたい。
オプションでWindows Helloの顔認証に対応するIRカメラも選択可能。とても便利ですし、比較的安いオプションなのでおすすめです。
スペック
今回紹介しているモデル:ThinkPad X1 Carbon Gen 10
機能 | 詳細 |
---|---|
CPU | Intel Core i5-1235U |
CPUコア/スレッド数 | 10コア / 12スレッド(Pコア2 / Eコア8) |
メモリ | 16 GB |
メモリスロット (空きスロット) | なし |
グラフィックス | Intel Iris Xe Graphics(GT2) |
ストレージ | 256 GB SSD (NVMe) |
OS | Microsoft Windows 11 Home |
光学ドライブ | なし |
ディスプレイ | 14.0インチ |
解像度 | 1920 x 1200ピクセル |
ポート類 | USB 3.2 Gen2 Type-C (Thunderbolt4 対応、電源と共用)x2、USB3.2 Gen 1 x1、HDMI x1 |
有線LAN | なし |
サイズ | 約 315.6×222.5×15.36mm |
重量 | 約1.12kg~ |
WTS的まとめ
キープコンセプトでほとんど変わらないボディと、着実にパワーアップしたCPUで、違和感なく最新世代へステップアップすることができます。
熱烈なファンの多いThinkPad X1 Carbonは、このような進化がベストと言えるでしょう。
ただ、出た当初は世界トップクラスに軽かったX1 Carbonですが、現在は他メーカーからも1kgを切る軽量マシンが数多く販売され、重量面では不利な状態。構造上軽くするのは難しいのかもしれませんが、できれば1kg以下を実現してほしいところ。
使い勝手は十分に熟成され、いつ買ってもソンしない、良マシンだといえます。
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