PCは、処理能力を上げれば上げるほど熱が高まり、冷却ファンがうるさくなっていきます。
主な騒音源の一つはグラフィックボード(通称グラボ)です。
高性能なモデルは2つや3つのファンが搭載され、ゲームプレイ時にはまるで掃除機のような音に。
グラフィックボード搭載のPCを初めて購入した人は、想像を超えるうるささに「多少機能は落ちてもいいから、ファンを無くすことはできないのか!?」「もっと静かに使いたい!」と思った人も多いでしょう。
ただファンレス(ファンがない自然放熱)グラフィックボードは、あるにはあるのですが、GeForce GT 710やGT 1030などおそろしく古い上に最低グレードのものばかり。はっきり言って最近のCPU内蔵GPUと、ほとんど差がないほどの低性能なのです。
そんなファンレス難民(?)は、ドスパラから新発売された「GeForce RTX 3050 KalmX 6GB」に要注目です!
レイトレーシングやAI処理も可能なGeForce RTX 3050 (6GBバージョン) を搭載しながらファンレスを実現!無音動作できるカードなのです。
ファンレスでどれほどの性能を実現できるのか?さっそく検証してみる!
- ミドルグレードのGeForce RTX 3050(6GB)を搭載しながら完全ファンレス
- ただしRTX 3050 (8GB)と比較すると、メモリだけではなくいろいろな性能を絞り込まれており、総合性能はワンランク下
- 補助電源必要なし
- カードはそれなりに大きい
- 画質調節をすれば、ゲームの大半は遊べる
GeForce RTX 3050 (6GB)のスペック
カードのスペックをチェックします。
メインチップはRTX 30シリーズである「GeForce RTX 3050 (6GB)」。
“GeForce RTX 3050″という名前ですが、長く販売されているRTX 3050 (8GB)とは別モノレベルでいろいろな制限が加えられています。単にメモリを減らしただけのバージョンではありません。
詳しくは下の表を見ていただきたいのですが、クロックからメモリ容量、CUDAコア数からメモリバス幅まで、すべてが1ランク下げられています。RTX 3050と”同じグレード”と言うには、ちょっと苦しいスペックだと感じます。
ただ、今回の記事で注目するのは絶対性能ではなく電源容量。
良く見ると「補助電源必要 115W」だったものが、「補助電源無し 70W」まで絞り込まれています。実に4割近い電力削減に成功しています。
”3050のいろいろな機能をちょっとずつ絞って、70Wの電力を達成した製品”と見ることが正しいでしょう。
RTX 3050 (6GB)
(レビュー品) |
RTX 3050 (8GB)
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アーキテクチャ | Ampere | Ampere |
GPU | GA107 | GA107 |
プロセス | 8nm | 8nm |
トランジスタ数 | 87.0億 | 87.0億 |
ダイサイズ | 200 mm² | 200 mm² |
SM数 | 18 | 20 |
CUDAコア | 2304 | 2560 |
RTコア | 18 | 20 |
Tensorコア | 72 | 80 |
ベースクロック | 1042 MHz | 1552 MHz |
ブーストクロック | 1470 MHz | 1777 MHz |
VRAM | GDDR6 6GB | GDDR6 8GB |
メモリクロック | 14.0 Gbps | 14.0 Gbps |
メモリバス | 96 bit | 128 bit |
メモリバンド幅 | 168.0 GB/s | 224.0 GB/s |
L1キャッシュ(SMごと) | 128KB | 128KB |
L2キャッシュ | 2MB | 2MB |
TDP | 70W | 115W |
補助電源 | なし | 6ピン x1 |
下記は製品スペックになります。(当カードはドスパラ専売となっています。記事執筆時点では他のサイトでは販売されていません。また入荷と同時に品切れとなることが多く、ほしい場合は随時チェックしてみてください。ときどき少数入荷しています。)
GeForce RTX 3050 KalmX 6GB | |
チップ | NVIDIA GeForce RTX 3050 |
接続 | PCI Express 4.0 |
メモリ容量 | 6GB |
メモリ種類 | GDDR6 |
メモリバス幅 | 96bit |
コアクロック | 1042MHz(ベースクロック) / 1470MHz(ブーストクロック) |
メモリスピード | 14Gbps |
モニタ出力 | Dual-Link DVI×1 HDMI 2.1×1 DisplayPort 1.4a×1 |
冷却 | ヒートシンク 2スロット占有 |
補助電源の有無 | 無 |
サイズ | 166.3×137×38.3mm |
カードをチェック
カードの外観をチェックしていきます。
ファンレスなので、ヒートシンクのパッシブ(自然)放熱のみに頼る形になります。RTX 3050 (6GB)は低電力とはいってもそれなりに発熱はありますので、大きくしっかりしたヒートシンクが搭載されています。
ヒートシンクはフィン(放熱パネル)の間隔を空けて、自然な風が通りやすくなっています。
2本のヒートパイプが通され、ヒートシンク全体にすばやく熱を拡散させる構造となっています。
2スロットを占有する厚さで、フルハイトサイズ。一般的なスリムPCには搭載できない大きさです。PCIeスロットからの電源のみで動作できるので、補助電源ポートはありません。
ヒートシンクの外側になる部分には、「GeForce RTX」のロゴが薄く印刷されています。(もしかしたら印刷ではなくショットブラストでの加工かな?)
控えめでオシャレです。
出力ポートはHDMI 2.1 が1ポート、DisplayPort 1.4a が1ポートに加え、最近は搭載が少なくなったDual-Link DVIも1ポート装備しています。
PCへの取り付け
PCケースは取っ手付きの小型mini-ITXケース 「Jonsbo T8」を使用。(当サイトのレビューはこちら)
ケース空間は狭く、さらにガラスパネルのため放熱力は高くありません。上部にケースファンがあり、下から上に煙突効果で熱を放出します。
ファンレスでは熱がどれほど上がるのか、のちほどチェックしていきたいと思います。
搭載したところ、けっこうフレームにギリギリの大きさで、ヒートシンクをこすらずに詰めこむのに少々苦労しました。下写真を見ると、JONSBO T8の一番後ろとなる部分が三角形に溶接されており、この中に収めるのに苦労しました。
なんとか搭載できました。ヒートシンクのフィンは薄いので、力を入れると曲がってしまうので注意してほしい。
搭載後はガラスから「GeForce RTX」のロゴが見えてオシャレ!
飾り気のない金属の文字がいい感じです。LEDで光るよりも渋くてかっこいいかも。
ベンチマーク
ベンチマークを取っていきましょう!
3DMark
ベンチマーク界で標準とも言える3DMarkにてテストしました。
GTX 1650、GTX 1660 SUPER、RTX 3050(8GB)、RTX 2060と比較してみます。
GeForce RTX 3050 (8GB)の能力を期待していると、ちょっと拍子抜けしてしまうかなとも思えます。ざっくりとRTX 3050 (8GB)のおよそ7~8割の実力です。
DX 11のテストではGTX 1660 SUPERより下回る部分が多いですが、Night RaidなどDX 12をメインで使うテストでは、30シリーズの強さがしっかり出ています。
とはいえ、電力を40%もカットしているのに、能力は15~30%落ちとなるので、電力のワク内で最大の性能を出せるよう調整されているな、と感じます。
スコアだけを見ればGTX 1650より上、GTX 1660 Superより下という位置取りですが、RTX 3050はTonsorコアを搭載しているため、独自の超解像技術「DLSS」が使用できます。
DLSS対応ゲームなら、画質を保ったまま大幅にフレームレートを引き上げられます。これがGTX 16xxシリーズとの大きな差別化になります。
ということで、DLSSに対応したゲーム「Cyberpunk 2077」をテスト。
グラフィック調整モードのベンチマークを実行してみます。それぞれのテストでDLSSは「自動」にしてあります。
FULL HD / 画質「低」なら、100fpsに到達します。平均は100.51fpsで、オブジェクトのディテールが簡素になったり、通行人が少なくなったりなどちょっと寂しくなるものの、けっこうヌルヌル動きます。5 vs 1の戦闘時もそれほど落ち込まず、操作は快適でした。
画質は「低」ですが、下のイメージを見るとおり、昔のようなジャギジャギの画面とは大違いです。上位グレードのグラフィックを知らなければ、十分に美しいと感じられる景色でしょう。
ウルトラワイド(3440×1440) / 画質「低」でもテストしましたが、なんと平均60.22fpsを達成。DLSSでもガクガクになるかと思いきや、けっこうマトモに遊べるので驚き!
ウルトラワイドでの画質。柱のディテールなどが少々のっぺりしていますが、動いていればほとんど気にならない程度です。
DLSSが使えるだけで、最新ゲームに追いつくことができます。
しかも無音!
聞こえるのはCPUファンの音だけなので、かなり静かになりゲームプレイに集中できます。
画質がすごい良くても爆音、画質は低いが無音。両極端な選択肢がうまれ、おもしろいですね!
エーペックスレジェンド
リアルタイムFPSエーペックスレジェンドです。
こちらもFULL HD、グラフィックを「中」程度にしています。ほとんどカクツキやフレーム落ちはなく、FULL HDで60~90fpsを維持できています。
ファンレスでも低温を保っている
ファンレスなので気になるのは温度ですが、こちらもかなり良い状態。
GPU ASIC消費電力 | 最大温度 | |
アイドル時 | 8~22W | 29.4℃ |
ベンチマーク時(1回) | 34~65W | 44.5℃ |
ベンチマーク(5分連続) | 34~65W | 54.2℃ |
(すべてHWINFOでのログにて確認しております。)
下グラフは、ベンチマークを回したり通常作業をしたりと、5分程度動かした様子。フルに回し続けなければ、50℃前後で抑え込むことができています。
ファンレスな上に風通しも悪い小型ケースで、この温度で抑えきっているのはすごい!
ベンチマーク時でも、温度が突然MAXに達するようなことはなく、じわじわと上がっています。耐久最大温度は83℃となっていますが、ベンチマークを繰り返してもまだ余裕が見られます。このヒートシンクすごい。
記事執筆時は春なので、猛暑の夏日ではもう少し上がるかもしれませんが、熱に関してはそれほど心配しなくてもいいかな、と感じます。
ファンレスが必要なら早めの注文を!
KalmXシリーズの前作は、2020年の「Palit GeForce GTX 1650 KalmX」。名前の通り、搭載しているGPUはGTX 1650でした。
動かせるゲームが限られるローグレードのカードではありましたが、無音カードを探し求める人に熱狂的に受け入れられました。ただ、製造の都合なのかGeForce GTX 1650 KalmXは後半ほとんど入荷が無く、オークションで高値で取引されるプレミアムものと化していました。
GeForce RTX 3050 KalmX 6GBにピンときたら、早めに確保することをおすすめします。
WTS的まとめ
GeForce RTX 3050 KalmX 6GBは、「ファンレス=全てをあきらめた低グレードカード」 という図式を塗り換え、ファンレスでもけっこう実用的なカードという新しいジャンルを切り開いています。
画質をある程度我慢すれば多くのゲームで60fps以上を実現でき、さらにDLSSが使えれば最新ゲームでもしっかり遊べてしまうのはおどろきでした。
個人的には「GeForce RTX 3050」のブランドはちょっと盛りすぎかなと感じますが、ファンレスでCyberpunk 2077が動くのなら納得です。
無音に絶対の価値を求め、その中で最大の性能がほしい!と考えている人には、現状、唯一無二の選択肢といえるでしょう。
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