各社から発売しているトラックボールを多数購入し、比較レビューする企画「トラックボール大比較」です!
トラックボールとは、指でボールを回すことでマウスカーソルを移動させる装置です。マウスのように腕や手首を動かさないので、手首の痛みに悩まされる人などが選択しています。
ただ、メーカーごとに形や大きさがまったく違い、一体どれが自分に合っているのか、判断するのは容易ではありません。
当サイトではあらゆるメーカーのトラックボールを買い集め、一人の人間が平行して使用することで、あなたにピッタリのトラックボールを見つけ出すための手助けとなるレビューを目指しています。
さて今回購入したのはエレコム(ELECOM)社から販売されている「IST(イスト) Bluetooth ベアリング支持 トラックボール」のレビューです。
当機種はボール支持部が一般的な「人工ルビー」タイプと、高精度な「ベアリングタイプ」が用意され、本体の形のみならずボールの操作感(エレコムでは操球感と称している)にまで非常にこだわっているのが特長。
今回は採用機種が非常に少ない「ベアリングタイプ」の購入レビューになります。
手のひら全体を支え、なだらかな傾斜が手首をラクに保持できます。手ごろな価格もあいまって、人気は上々です。めずらしいベアリングタイプの操球感とはいかなるものなのか?筆者も初の体験となります。
さっそくレビューをしていきましょう。
筆者の手のサイズ詳細
参考までに、筆者の手の形と大きさを提示します。
性別:男性。指は細め。手首(付け根の1本目の線)から中指の先まで18.2cm。手のひらの厚みは中指の骨の部分で約3cm。
指の長さ(爪の先から手のひらの付け根部分まで)は、親指・・・約6.2cm、人差し指・・・約7.8cm、中指・・・約8.5cm、薬指・・・7.8cm、小指・・・6.7cm。
トラックボール 操作タイプ
トラックボールには大きく分類して3つの操作タイプがあります。
- 親指ボールタイプ・・・このタイプはクリックボタンがマウスと同じような形になるため、マウスからの乗り換えがスムーズです。ただ、親指でのボール操作は微細な操作がやりにくい場合があります。
- 人差し指ボールタイプ・・・このタイプはボールがやや大きなものが多く、親指よりも微細な操作がしやすいのが特長です。ただ、クリックボタンやホイールが親指操作になるので、マウスから乗り換えは慣れるまで少し時間がかかります。
- 特殊タイプ・・・上記2つに分類しにくいものをまとめています。かなり大きなボールを複数の指で使ったり、ひねり回転を使ったりと、斬新な操作になります。マウスからの乗り換えにはかなり慣れが必要ですが、慣れると手放せなくなる操作感です。
ELECOM ISTは「親指タイプ」になります。
かなり多いバリエーション
IST(イスト)は通信方式が3種類、カラーが2色、ボール支持タイプ2種類でなんと12種類ものバリエーションとなっています。
さすがにバリエーションが多すぎではないかと感じますが、よりジャストなニーズに応えてくれるのはユーザーにとってはありがたいところ。きめ細かな周辺機器で人気を博してきたELECOMならではのラインナップといえるでしょう。
ただ、パッケージも非常に似ている上に本体も同じ形なのでややこしい。購入の際は希望の仕様と合っているか、何度も確かめてください。
通信方式
Bluetooth/有線/2.4GHz USB
カラー
ブラック/ホワイト
ボール支持タイプ
人工ルビー/ベアリング
今回は「Bluetooth、ベアリング、ホワイト」のタイプになります。
ベアリング、Bluetoothはこちらの2種類。
★今回のレビュー商品★ | |
ホワイト/Bluetooth | ブラック/Bluetooth |
形のチェック
形状をチェックしていきましょう。
全体に丸みを帯び、手の形に合わせるように複雑な曲面で構成されています。右に大きく傾いており、手首を無理にひねらずにテーブルに自然に置くような状態で、そのまま持つことができます。
ホワイトモデルは良く見ると2色構成で、ボタン部分が明るい白、手のひら部分はわずかにグレーがかった白です。モダンな印象。
Logicool M575S(レビュー記事)とよく似た形ですが、こちらの方が少し高さがあり、傾斜が大きい。ISTの方が手首は少しラクに感じます。筆者の手のサイズにはぴったりと合っています。
正面から撮影。
手を自然に置いた形になるよう、なだらかに右に下がっていくデザイン。
左右ボタンとホイールはマウスと同じようなレイアウトで、マウスからの乗り換えもスムーズ。
進む、戻るボタンは人差し指がラクに動かせる位置にあります。反発はちょうど良いかたさ。
後ろからの写真。
手のひらのへこむ位置に合わせ、複雑なふくらみを構成しています。手のひら全体にくまなく密着するような感触です。
薬指、小指への場所は、ちょうど指を乗せられるようにふくらんでおり、長時間使用するときに指もラクに感じます。
親指を自然に伸ばした位置にボールの頂点が来ていて、奥側にも、手前側にも動かしやすい。
平たいマウスで手首をグイグイとひねりながら使っていた人は、手首の自然な形にむずがゆささえ覚えるかもしれません。
クリック音など
クリック音は「カチッ」としっかり聞こえる音です。
進む戻るボタンも、「カコッ」と小さめですがしっかり聞こえます。
ホイールの音は静かめ。すばやく回すと「ジッ」といった音が聞こえますが、ゆっくり回すときは無音に近いです。
ボール回転のチェック – ベアリングの感触とは?
いつもはボールの大きさなどをチェックしますが、今回はもっとも気になるベアリングによる回転感を先にお伝えします。
まずボールを回転させると、わずかな力でススッと回り出します。通常操作をしてみると、あまりに軽く回るので中央で止めておくのがむずかしいほどよく動きます。
大きく動かすためにボールをはじいてみると、ルビー支持モデルなら1~2回転するところ、ベアリングモデルは3~4回転ほどします。カーソルがふっ飛んで行きます。(笑)
ルビー支持モデルとは比較にならないほどの抵抗感のなさ!
「宙に浮くような」といううたい文句は、たしかにうなずけるものがあります。
エクセル、ウェブ編集などカーソルを多用するソフトをしばらく使ってみましたが、最初はルビーモデルのクセが抜けずカーソルがふらついて手こずったものの、慣れてくるといままでの1/2~1/3の力でスイスイと動かせ、ほとんど親指に力を入れなくても良いことに気づきます。
マウスから親指タイプのトラックボールに乗り換えて、「肩こりは軽くなったけど親指が疲れる」と感じていたら、ベアリングモデルは体験した方がいいな、と感じました。
ただルビーモデルとは明らかに違う特徴があります。
まずは「音」。
ルビー支持モデルはささやかに「シュッ」や「コーッ」という擦れ合う音がする程度ですが、ベアリングモデルは「ゴロゴロ」「ザリザリ」といったしっかりした音が聞こえます。
強くはじいた際は「ガーッ」「ザーッ」という引き戸のような音が出ます。(もちろん引き戸よりは小さな音ですが。)
ベアリングは機械部品なので当然出てしまう音ですが、「トラックボールは静かなものだ」と思っている人には、しっかり聞こえる音に驚くかもしれません。
とはいえ、終始気になるような大きな音ではありません。筆者はそれほど気になりません。機械的な音が好きという方には、むしろ「使っている感」があって喜ぶかもしれません。
ただ、社内や図書館など静かな空間で使う際には、周りの様子をうかがいながら使った方がいいかもと思います。
次に「感触」。
ルビーではなめらかな球がすべっているような感触ですが、ベアリングモデルは少しザラつく感触があります。音同様に、感触も好みが分かれそうな感じです。
「ザラつく」といっても砂利の上を転がすようなデコボコ感ではありません。ボールの回転にざらっとした感触がある程度です。またベアリングの振動が本体に伝わってきている感触も少しあります。
ルビータイプと比較し、雑音や感触など、ある意味デメリットも存在することが分かりました。
ですが、この異様なまでの「軽さ」は、わざわざエレコムが別に販売する意味があるな、と感じます。
ボールのチェック
ボールは一般的なトラックボールが34mmのところ、ISTはひとまわり大きな36mmを採用。一回でより大きく動かせ、操作の回数を減らすことができます。ボールの色は、ホワイトモデルはシルバーメタリックです。
ボールが大きいと親指への感触がソフトで、強く回す際もくいこむ感じがほとんどありません。
ボールは抜き取って気軽に掃除ができます。
ボールを抜くと、内部に3点のベアリングが付いているのが見えます。
この部分のみも別売りされており、あとから自分でルビータイプに変更することができます。これはうれしいサービス!交換用の引き抜き具も付属しています。
ISTシリーズ用 交換パーツ 人工ルビーユニット | ISTシリーズ用 交換パーツ ベアリングユニット |
専用アプリケーション
ボタンは専用ソフト「エレコム マウスアシスタント 」にてさまざまな機能を割り当てることが可能です。
無線タイプは3種類
無線接続には2.4GHz 無線USBアダプタ、Bluetooth、有線で、それぞれ別の製品となっています。使用スタイルを考えて選択してください。
2.4GHz 無線USBアダプタ、有線タイプは、USBポートがなければ使えません。スマホやタブレットで使いたい場合は使えない可能性があります。
Bluetoothでは、デスクトップPCでは搭載していない場合があります。その場合は別途USB Bluetoothアダプタを付ければ使用できます。
2.4GHz 無線USBアダプタタイプは、本体下部のスロットにアダプタを格納できます。超小型で、利用時もジャマになりません。
Bluetoothモデルは電源スイッチの下にBluetoothペアリングボタンが付いているのでわかります。
次にそれぞれの使用感です。
2.4Ghzレシーバは停止状態からボールを動かして、すぐに反応します。10分放置しておいたあとは1~2秒ほどのスリープラグ(スリープ状態から反応するまでの空白時間)があります。
Bluetoothでも同じような使用感で、10分放置後は1~2秒ほどのスリープラグが感じられました。BluetoothのバージョンやPCの状態にも影響されるため、環境によってはもう少しラグが出る可能性があります。
どちらも使用中に気になるような途切れは感じません。
電池一本で最長2年使用できる!
バッテリーは単三形乾を電池1本。なんとたった一本で最長25カ月(2年と1ヶ月)も利用できるとのこと。信じられないほど省電力です。(※持続時間は公称値。2.4Ghzモデルにおいて。)
乾電池なら、外出先でバッテリーが切れてもすぐに購入できるので安心です。
WTS的まとめ
ボールを回すのは意外に力を入れていたんだな、と、このベアリングタイプを使うと実感できます。ルビーモデルと比較すると、かなり小さな力で動いてくれますので、マウスを多用するアプリで長時間操作しても疲れにくいと思われます。
トラックボールとしての性能はとても良く、スムーズで正確なボール、手首のラクさ、手ごろな価格がかなり高次元にまとまった一台です。マウスと同じボタンなので移行もスムーズでしょう。
ただそのバリエーションの多さゆえに、自分に最適なものがどれか、無線方式や機能についてある程度予習しないといけないのはマイナスポイントかもしれません。
「肩こりは軽くなったけど親指が疲れる」と感じていたら、ベアリングタイプを試してみる価値はあります。
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